「もう一度役者として」 91歳仲代さん、来秋舞台で復帰

公演への意気込みを語る仲代さん=七尾市の能登演劇堂

  ●無名塾「肝っ玉おっ母と子供たち」 能登演劇堂で発表

 俳優仲代達矢さんが主宰する劇団「無名塾」が来年10、11月、七尾市の能登演劇堂で市制20周年記念公演「肝っ玉おっ母と子供たち」を上演する。仲代さんが25日、会見した。仲代さんは今秋の「等伯-反骨の画聖-」(北國新聞社後援)では演出に専念したが、「もう一度役者として頑張りたいと思った」と語り、91歳で迎える舞台に主役として復帰することを明らかにした。

 能登演劇堂での会見にはキャストの山本雅子さん、舞台統括の林清人さん、演劇のまち振興事業団理事長の茶谷義隆市長が出席した。

 仲代さんは、「等伯」では演出を務めたことに触れ「役者の第一線から身を引いたと思った人もいたし、もしかしたら、そうなっていたかもしれない。しかし、精神を切り替え、頑張りたいと思った」と再び舞台に上がることになった経緯を説明した。

 自身の役者人生については「どこで終わりにするかは常に考えているが、どこかで『もう一本だけ』という思いがある」と語った。

 「肝っ玉おっ母と子供たち」は、仲代さんの亡き妻宮崎恭子(やすこ)(ペンネーム隆(りゅう)巴(ともえ))さんが演出を手掛けた思い入れのある作品。初演は1988(昭和63)年で、2017年に能登演劇堂で再演された。

 三十年戦争のまっただ中にあった17世紀の欧州の民衆を描く。仲代さんは3人の子を引き連れて戦地を渡り歩き、兵士に食材や備品を売って生計を立てる女商人アンナを演じる。

 太平洋戦争で空襲を経験し、同級生を亡くした仲代さんが、平和への願いを伝えることについて「役者としての義務」と話した。

 仲代さんは、「等伯」や昨年の「いのちぼうにふろう物語」(北國新聞社後援)で実現した市民の出演について、「私個人としては、もし協力していただけるならもう一度皆さんとやってみたい」と答えた。茶谷市長は「非常にありがたい言葉だ」と述べた。

 能登限定での公演となり、来年10月18日~11月10日に全20回上演される。

会見に臨んだ(右から)林さん、山本さん、仲代さん、茶谷市長

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