築160年古民家にそば店 社福法人が運営、「農福食の融合」構想10年 青森・南部町

助七の店内で、十割そばを前にする工藤理事長(中央)

 築約160年の古民家を改装し、青森県南部町に11月「蕎麦(そば)処 助七」がオープン、営業開始から約1カ月を経て、にぎわいをみせている。運営する社会福祉法人「恵生会」法人本部の工藤愛施設長は「里山福祉の実践として農福食を通じて人と人をつなぎ、地域の元気につながれば」と話す。

 古民家は元々、同所の農家が所有していた江戸時代末期のもので、同農家の屋号「助七」をそのまま店名に生かした。立地場所は今春、146年の歴史に幕を下ろした向小学校の近接地。恵生会が社会福祉施設を運営して約42年、工藤施設長は農福食の融合で10年ほど前から南部地方の粉もの文化食のそばの提供を構想し「どうせやるなら本物の味、香りにこだわりたい」と計画を進めた。

 そば粉は三戸町袴田などにある約1ヘクタールの畑で5年前から自家栽培で氷温熟成させたものを使用、うどんは南部小麦とネバリゴシをブレンドしたもの。店長を務める、同福祉法人で介護職として働いたインドネシア出身のヌル・セティアルティさん(52)=愛称・アルティさん=が配合を考えた。アルティさんは来日20年以上。母国でパティシエの資格を持っており、麺の手打ちは初めての経験だが、4年ほど試行錯誤を繰り返し、そばは田子町の師匠や東京の江戸蕎麦の会で学び、十割そばの手打ちを習得。うどんは本場香川県に通って技術を身に付けた。

 10日、翌日のオープンに先駆けて神事と試食会が行われ、工藤恵一(よしかず)理事長ももてなす中、集まった人たちが古民家の柱や梁(はり)を生かしてモダンにリノベーションした雰囲気ある店内で打ちたて、ゆでたての十割そばを味わった。椅子は20席、座敷は35人が収容可能で、そば、うどんのほか、天ぷら、ご飯ものやデザートなど約20種のメニューをそろえ、アルティさんが「インドネシアの本場の味を」とナシゴレンもメニューに加えた。材料は可能な限り、周辺を含めた地場のものを使うという。同店の通常営業日は当面、金・土・日・月曜で、営業時間は午前11時~午後2時半(午後2時ラストオーダー)。

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