没後40年・寺山修司の競馬愛 専門家2人が語り尽くす 青森・三沢市

テンポイントの追悼詩を朗読する佐々木さん(左)と、島田さん

 劇作家で詩人の寺山修司(1935~83年)と競馬を考える催しが24日、三沢市国際交流教育センターで開かれた。同市で幼少期を過ごし、後にマルチな才能を発揮していった鬼才が、なぜ人馬が織りなすドラマにのめり込んだのか-。専門家の2人がファン約30人の前で、寺山の競馬愛について語り尽くした。

 寺山の没後40年に合わせ同市の寺山修司記念館などが企画。競馬に関する著作が多い東京都在住の作家島田明宏さん(59)、寺山主宰の前衛劇団「天井桟敷」にかつて参加し、映画にも出演していた記念館館長の佐々木英明さん(75)が講演に臨んだ。

 寺山が競馬をエッセーやコラムの素材として好んだ理由について、島田さんは「一流騎手が敗れ、三流血統が逆転する。ちょっとした未来を読む難しさ、理不尽さに魅了されたのでは。毎度違ったことが起きるからネタになるし、していたように思う」と推察。佐々木さんは寺山の馬券の購入基準を「もうけるのではなく『当てる』だった」と分析し「負けず嫌いな性格ゆえ、1レースあれば買える限りのパターンの馬券を買い占めた」と振り返った。

 また青森高校の後輩にも当たる佐々木さんが、人でごった返す場外馬券場に馬券を買いに行かされ苦労した逸話を披露し、参加者の笑いを誘っていた。

 この日は中央競馬注目のレース「有馬記念」の開催日。会場では特別に映像が映し出され、愛好家は固唾(かたず)をのんでレースの行方を見守った。また寺山が手がけた競走馬テンポイントの追悼詩も、詩人である佐々木さんによって朗読された。

 催しは、島田さんが三沢市に縁の深い架空の競走馬を登場させた新作「ブリーダーズ・ロマン」(集英社文庫)の刊行記念も兼ねて行われた。

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