モロッコ地震の惨状、神戸の団体が直視 遺児支援へ寄付募る 見渡す限りのがれき、腐臭も

つえをつき、壊滅した自宅跡周辺に立つ男性と岩村義雄さん(左)=11月、モロッコ中部(神戸国際支縁機構提供)

 北アフリカのモロッコで今年9月にマグニチュード(M)6.8の大地震が起き、約3千人が犠牲になった。2カ月後、国内外で被災地支援を続ける神戸の団体が震源地付近を訪れると、まだがれきが散乱し、家族を亡くした人々が喪失感と向き合っていた。団体は親を失った子どもの住まい確保や教育のための寄付金を募っている。(上田勇紀)

 地震は9月8日夜(現地時間)に発生した。一般社団法人「神戸国際支縁機構」(神戸市垂水区)の代表、岩村義雄さん(75)と事務局長の佐々木美和さん(31)が11月上旬、首都ラバトから約350キロ離れた震源地付近に向かった。

 観光地マラケシュの南西約70キロ。アトラス山脈がそびえる山岳地帯を歩くと、れんがやセメントでできた民家は崩れ、テント暮らしを強いられる被災者の姿があった。岩村さんは「爆弾でも落ちたのかと思うほど、見渡す限りがれきが広がっていた。腐臭がした」と話す。

 約1週間の滞在中、2人はイルブールという村で、つえをついて歩く男性(31)と出会った。「ここに自分の部屋があったんだ」。指さした先にはがれきがあった。男性は地震で両親ときょうだいら家族8人を亡くした。自身も足に障害を負い、1週間ほど前に退院したばかり。道路工事の仕事を失い、仮設住宅で暮らしていた。

 同法人は牧師の岩村さんが2001年の米同時多発テロをきっかけに設立。16年以降は寄付を基に、世界各地の被災地などに親を亡くした子どもが暮らせる施設を建設している。

 モロッコでも父親を亡くした子どもに会った。現地では仕事を持つ女性は少なく、今後の生活は苦しい。岩村さんらは施設を建てられる場所を探した。

 紹介された土地の所有者に事情を説明すると「子どもたちのためなら」と無償で貸してくれることに。地震で7歳の一人息子を亡くした女性(25)も運営を手伝ってくれるという。佐々木さんは「厳しい境遇にありながらも、みんな親を失った子どもたちのことを心配していた。その思いやりに応えたい」と言う。

 施設は5人程度の入居を想定し、食事も提供する。建設費は約100万円。完成後は子ども1人当たり月3千円を送って教育支援に充てる考えで、建設費と教育費の寄付を募っている。

 活動の詳細などは同機構「カヨ子基金」のホームページで。

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