クマ10月以降も活発 本社調査団、金沢で分析

センサーカメラに写ったクマ。撮影した映像をAIで解析した=金沢市内の山林(大井特任教授提供)

  ●38回センサーカメラ捉える、例年の4倍 

 北國新聞社の手取川環境総合調査団が金沢市内の山林に設置したセンサーカメラにクマが写っていた回数が10月以降、例年の約4倍の38回に上ったことが30日、分かった。石川県内で10月以降、クマによる人身被害が相次いだのは、晩秋になっても比較的気温が高く、クマの活動が活発だったためとみられ、調査団はそれを裏付ける結果としている。

 調査はクマの生態に詳しい石川県立大の大井徹特任教授が担当した。6~11月に犀川上流域の山間部18カ所と角間地区の市街地周辺の山林19カ所に赤外線センサーカメラを2台ずつ置き、クマの動向を調べた。

 角間地区で撮影した映像をクマ識別AI(人工知能)で解析したところ、クマが写った回数は6~9月は例年の半分程度の29回にとどまった。一方、例年出没が少なくなる10~11月の2カ月で写った回数は38回を数えた。

 10月3日午後1時49分28秒の映像には木に登る2頭のクマが写っていた。

  ●気温高く、餌不足 県境越えか

 県内の人身被害は10月に金沢市、小松市で各1人、12月16日には白山市鶴来地域で3人が襲われた。大井特任教授は、秋以降に出没が相次いだ原因として、「気温が高かったことに加え、富山、福井県から県境を越えてクマが移動してきた可能性がある」と指摘する。

 大井特任教授によると、今年はクマの餌となるドングリは石川県では並作だった一方で、富山、福井両県は不作か凶作だった。このため、餌を求めて富山、福井から石川に移動してきたクマが晩秋になり、さらに餌を探しに市街地に降りてきた可能性があるという。

 石川県内のクマの目撃・痕跡情報は12月25日現在、320件で、昨年1年間の264件を56件上回った。市町別では、加賀市が96件、金沢市が84件、白山市が68件で、富山、福井と県境を接する3市で、全体の約8割を占めている。

 クマは2000年以降、手取川上流域の白山麓や金沢の山中から能登地方にまで生息域が広がっている。近年は市街地の近くに定着して生活圏に出没するケースも増えている。

クマの出没について説明する大井特任教授=石川県立大

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