31歳独身記者、その気はなかったけれど「婚活」に挑戦  出会いの先に見えてくるものとは

婚活に挑戦する長沢記者。見上げた空の雲間に光が差す=三木市上の丸町

 2023年12月9日。三木市立市民活動センター(兵庫県三木市末広1)の一室に男性8人、女性6人が集まった。入り口には「恋活 in 三木」との張り紙。いわゆる婚活イベントだ。

 私は今回、取材者ではなく、1人の参加者としてここにいる。初めての経験で、喉が渇いて声がうまく出てこない。なぜ、こんなことに-。そんな言葉が何度も浮かんでは消えていく。 ### ■長沢記者の場合

 私は長沢伸一。神戸新聞記者になって5年。まもなく32歳になる。

 30歳を超えたころからだろうか。実家の父(71)からの圧力をひしひしと感じるようになった。

 「なあ、いつになったらあんたのパートナーを紹介してくれるんや」

 その言葉を最後まで聞きたくないがために、慌てて最近の仕事について話し始める。父はそれ以上なにも言わないが、心中はもっと尋ねたいに違いない。

 全国でもそうだが、三木市の未婚率が幅広い世代で上昇し続けている。私のような30~34歳の男性は、1990(平成2)年は28.2%から、2020(令和2)年には51.9%に。およそ2人に1人は独身ということになる。

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 最後に女性を好きになったのは大学院生のとき。だが振り向いてはもらえず、会うと元彼への思いを延々と聞かされ続けた。

 友人が設定した合コンにも参加したが、緊張で胸が苦しくなり、何も食べられないまま、会が終わる。「お金を払ってまで緊張と戦い、好きかどうかも分からん人と会う必要なんてないやん」。以降、出会いの場に足を運ばなくなった。社会人になり、父から婚活を促されても「仕事が忙しいから」とかわし続けた。

 一昨年、父方と母方の祖母を相次いで亡くし、家族は父だけ。生命保険を契約しても、保険金の受取人は年老いた父しかいない。

 それでも、今更新たな一歩を踏み出す気にもなれない。もんもんとした気持ちにふたをして仕事に打ち込む日々が続いていた。

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 昨年の11月下旬、新年の連載記事を何にするか同僚と話し合った。なかなかよいテーマが見つからず、行き詰まっていた。

 「婚活、はどうですか。私が婚活イベントの体験リポートを書きますから」

 苦し紛れに口にした提案だったが、同僚は「ええなあ。よし、それに決まりや」。え? 本当に? 頭の整理が付かないまま、独身男女に出会いの場を提供する三木市の「みきで愛(出会い)サポートセンター」にメッセージを送った。

 「婚活イベントに参加希望です」

 私の婚活はこうして始まった。

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 昨年12月、クリスマス間近。はじけるようなカップルたちの笑い声が、いつも以上に気になる。街の至る所がイルミネーションに彩られ、手をつなぎ、肩を寄せ合う幸せそうなカップル。そんな時期に、同僚と2人でラーメンをすする私。

 「クリスマスをいつまで1人で過ごすんやろな」

 同僚との会話も途切れ、店外に出ると冷たい師走の風が独り身に染みる。いつか、クリスマスの街を好きな人と一緒に歩いてみたい-。婚活への意欲が少しだけ湧いた気がした。

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 マッチングアプリ、婚活パーティー…。独身男女の「出会い」がこれまでと大きく変化しているようだ。この連載では、記者がみきで愛サポートセンターを通じて初めての婚活に挑戦。併せて同センターで婚活を成就させた男女に話を聞き、その変化の最前線に迫る。「出会いの先」に、見えてくるものとは-。(長沢伸一、小西隆久) 【みきで愛(出会い)サポートセンター】 2008年11月22日に設立され、三木市が委託する形で独身男女に出会いの場を提供。年数回の婚活パーティーを担う「みきハート部会」と登録者同士のお見合いを組む「サポーター部会」がある。いずれもボランティアが活動する。

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