崩れた街、見通せぬ復旧 県自主防災アドバイザー・千川原さん

千川原公彦さん

 石川県で最大震度7を観測した能登半島地震で、山形県自主防災アドバイザーで、ウェザーハート災害福祉事務所代表の千川原公彦さん(52)=山形市=が5日、震度6強を記録した石川県珠洲市での被災者支援活動を始めた。山形新聞の取材に対し「復旧が見通せないほど街全体が崩れている。衛生環境が悪化しており、助かっても、今後は災害関連死が出ることが懸念される」と語った。

 千川原さんは珠洲市社会福祉協議会の支援要請を受け、自家用車で4日午前7時過ぎに山形市を出発。珠洲市には同日午後10時過ぎに入った。石川県に入り珠洲市まであと100キロほどに近づいたあたりから、幹線道路の路面状況は一段と悪くなり、緊急車両などの通行量も多く、渋滞が発生していた。通常は2時間程度で着く所も、約8時間を要した。「路面の崩れや段差で片側交互通行の連続。1~2時間の立ち往生も余儀なくされた」と振り返る。

 車中泊し、5日は午前から市内を巡回し、被害状況を確認した。津波で流されたとみられる車、倒壊した家屋…。千川原さんの目の前には深刻な被害の状況が広がっていた。同市は昨年5月も震度6強の地震に見舞われ、千川原さんは当時も支援に入っているが、全く状況は異なっているという。「街全体が崩れ、感覚的には東日本大震災の被災地と同じような状況だ。復旧はいつになるのか」と口にした。

 現地では食料と飲料水が不足し、暖を取るのも難しい状況だという。冷え込みによる低体温症も懸念される。救援物資は届いたとしても、市役所などの職員も被災し、分配する人が足りず、被災者まで行き届きにくい状況になっているという。

 さらに深刻になっているのはトイレだ。仮設を含め圧倒的に数が足りていない。「トイレがしっかり整備されないと衛生環境が悪化し、健康への影響が懸念される」と指摘。衛生環境が悪くなると、避難所では感染症などが広がる恐れもあり、地震や津波からは助かっても、災害関連死につながる懸念があるという。

 千川原さんは11日まで滞在予定で、民間の活動拠点となる災害ボランティアセンターの立ち上げや運営をサポートし、地域を巡回し必要な支援を同協議会に助言する。

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