〈1.1大震災〉発生124時間、90代女性救出 珠洲・正院町の倒壊家屋

  ●ベッドで助け待つ はっきり受け答え

 能登半島地震で6日午後8時20分ごろ、珠洲市正院町川尻の民家から90代前半の女性が救出された。最大震度7を観測した地震発生から124時間、丸5日が経過していた。住民の女性は脈が確認できる状態で、珠洲市総合病院に搬送された。女性は倒壊家屋のベッドの上にいた。生存率が著しく下がる「72時間」を大幅に超える救助となり、女性の息子(71)は「ありがたいです。本当にそれだけです」と話した。女性は快方に向かっているという。

  ●40代女性は心肺停止

 警視庁と福岡県警が合同で救助に当たった。日中から行っていた捜索活動で、倒壊した2階建て家屋の1階部分から、女性2人が、がれきに挟まれているのが見つかった。90代女性は手を握ると温かく、脈が確認できた。40代女性は心肺停止状態だった。

 発見時、90代女性は救助隊員と会話ができ、災害派遣医療チーム(DMAT)の治療を受け、倒壊家屋から運び出された。石川県警によると、女性は救出時、呼び掛けにはっきり受け答えができたという。

  ●雨の暗闇、救助隊員100人超 「よく頑張った」と声掛け  

 救出は冷たい雨が打ちつける暗闇の中、ライトをつけて行われた。救急車に搬送する際は100人を超える救助隊員が「頑張れ」「よく頑張った」と声を掛けて女性を励ました。

 救出後の会見で警視庁広域救急援助隊管理官の西村伸夫警視は「長年、こうした仕事に当たっているが、初めての経験だ。こういうことが明日以降もあり得る。あきらめずに全力で捜索に当たる」と話した。付近住民によると、女性は息子と二人暮らしで、地震が起きた1日は孫夫婦とひ孫の合わせて4人が帰省していた。40代女性はこの4人家族のうちの1人とみられる。90代前半女性と40代女性はそれぞれ別棟から発見された。

  ●住民「本当に良かった」

 救出があったのは、被災した正院町の住民が身を寄せる避難所の一つ、正院小の近く。「生存」の一報に知り合いや近所の人たちから「助かって、本当に良かった」と安どの声が広がった。正院町区長会長の濱木満喜(みつよし)さん(76)は「日中から救助活動をしていたので心配していた。丸5日間、本当によく頑張ってくれたと思う」と話した。

  ●警察庁が動画公開

 警察庁は6日、女性を救出する様子を撮影した動画を公開した。雨音らしき音が響く中、警察官らが「毛布、毛布!」「足元注意!」と叫びながら活動を続ける様子が写されていた。

  ●救助隊の手順評価 専門家

 石川県警によると、救助隊は女性を発見後、医師による必要な措置を経て、がれきを除去した。医師で東北大・災害科学国際研究所の佐々木宏之准教授は「がれきで四肢を挟まれた状態から突然筋肉の圧迫が解除されると、体内に毒素が回り、突然死に至るケースがある」と、救助隊の手順を評価した。

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