〈1.1大震災~連載ルポ〉寒さと雪「我慢せな」 輪島・車中泊の被災者

愛犬とともに車中生活を送る山中さん(手前)=8日午後2時15分、輪島市鳳至小グラウンド

  ●エンジン切り過ごす 燃料節約、CO中毒防止に

 疲弊する被災地に強い寒波が追い打ちをかけた。8日、厳しい冷え込みとなった奥能登各地。車中泊を余儀なくされている被災者の中には、貴重なガソリンを節約する目的に加え、積雪による一酸化炭素(CO)中毒を心配してエンジンを切って過ごす人もいた。「こんな時やから、ある程度は我慢せな」。輪島市内で出会ったお年寄りの1人はそう話すと、運転席で毛布にくるまり、歯を食いしばった。(社会部・巻山彬夫)

 8日未明、輪島市山岸町の市立輪島病院駐車場には、車中泊の避難者が乗った車が40台ほど並んでいた。最低気温は氷点下。しんしんと降る雪がボンネットを白く覆っていく。

 同市杉平町の介護施設職員、藤井敏彦さん(60)は1日以降、妻と2人で乗用車に寝泊まりする生活を続けている。就寝中は基本的にエンジンをかけていないという。

 市内では一部のガソリンスタンドが営業を再開しているものの、給油待ちで車列ができることも珍しくない。藤井さんはガソリンの減りを抑えようと、大雪が予想された7日も車の暖房をつけず、厚着と毛布だけで一夜を明かした。

 この日は、雪による一酸化炭素中毒も心配だったという藤井さん。車のマフラーが雪でふさがれると、排ガスが車内に流れ込み、死に至るケースがある。

 「朝起きて、マフラーを確認してからエンジンをかけたんや」。車中で寝泊まりすること1週間、藤井さんは「いつまで耐えられるか」と不安を口にした。

 同市マリンタウンの公務員奥谷内正さん(29)は後部座席を倒し、妻と子どもと3人で布団をかぶって眠った。「ガソリンもそうやけど、バッテリーも心配でエンジンをかけられない。寒かった」と手をこすりながら振り返った。一方で、「昨晩(7日夜)は寒すぎて暖房に頼った」という避難者もいた。

  ●愛犬2匹と一緒に

 輪島市鳳至小のグラウンドでも車中泊の避難者が目立つ。市内の漁師山中修身さん(72)は、愛犬がいて避難所に入ることが難しかったため、車での生活を続けている。

 家族3人と犬2匹で過ごす車内は狭い。エコノミークラス症候群になるのを防ぐため「車から時々外に出て、体を動かしている」という山中さん。「今のところ体調に問題ない」と気丈に振る舞ったが、終わりの見えない避難生活は被災者の心と体を削っていく。

 

 ■車中泊避難の注意点

・定期的に換気するなど一酸化炭素中毒の対策をする。

 【エコノミークラス症候群】

・定期的に散歩や体操など足の運動を行う。

・こまめな水分摂取(目安は1日1㍑以上)。

 【低体温症】  

・乾いた衣類の重ね着をする。

・体を寄せ合って過ごす。

・上着の中に新聞紙を詰める。

(日本血栓止血学会、避難所・避難生活学会ホームページから抜粋)

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