「負けてたまるか!!」 不屈の住職、地域励ます 07年全壊、門前の興禅寺

「負けてたまるか‼」の掲示板の張り出しと法輪山興禅寺の住職市堀玉宗さん=5日、輪島市

 「負けてたまるか‼」。昨年の第8回赤羽萬次郎賞で優秀賞を受けた輪島市門前町の法輪山興禅寺の住職市堀玉宗さん(68)が、通りに面した寺の掲示板の張り出しで被災者を懸命に励ましている。2007年の地震で寺が全壊し、再建。再びの大地震に、「みんなに響くかは分からないが、自分への呼びかけでもある」と思いを語る。

 境内の灯籠や石像が軒並み倒れ、市堀さんは地震発生以降、片付けに追われていた。再建した本堂は難を逃れたが、「揺れは前の比じゃなかった」と振り返る。

 通りからよく見える掲示板は、さまざまな言葉とともに地域を見守り続けてきた。今回の地震後には「人生いろいろある。でも諸行無常の中であきらめないでほしい」との思いを強め、墨でしたためた。

 地震後の混乱の中でも、近隣住民が菓子を持って訪れてくるほど愛されている。「ありがとう」と顔をほころばせる市堀さん。「進んでいた人口減が、地震でさらに加速するかもしれない。それでも寺を続ける。最後の一人になるまで」。地域住民のよりどころであり続ける覚悟だ。

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