〈1.1大震災〉「早く見つけてあげて」 朝市捜索、隣人の安否憂う

輪島朝市周辺の大規模捜索の現場を出る車両=9日午後3時42分、輪島市河井町

 「早く見つけてあげて」。降りしきる雨の中、住民たちは連絡が取れなくなった隣人の安否を気遣い、祈るように見守った。9日、能登半島地震で一帯が焼け野原となった輪島市の観光名所「輪島朝市」周辺で石川県警が150人超を投入して実施した捜索活動。がれきの下に残された人の痕跡が発見されたのか、警察官が捜索の手を止め、周囲から見えないように現場をブルーシートで覆うと、住民たちは目を潤ませ、手を合わせた。

 午後1時前に富山、岐阜、山形などの各県警の警察官が列をつくって規制線の中に入り、10人ほどの班に分かれて捜索を開始した。焼け落ちたがれきに踏み込み、手で慎重に取り除いたり、スコップで土を掘り起こしたりした。

 午後2時半ごろ、朝市通りの入り口から100メートルほど奥に進んだ場所で活動を行っていた捜索隊員の手が止まった。ブルーシートが張られたことから、遺体が発見されたとみられる。

 その後、鑑識や科学捜査研究所(科捜研)の担当者が慌ただしく出入りし、シルバーのワゴン車が到着。見つかったとみられる遺体を運び込んだ車の中も様子が分からないようにとシートに覆われた。

 午後3時45分ごろに車両は出発、手を合わせて見送る高齢女性の姿もあった。近所に住む男性(74)によると、数日前に警察官が安否不明者の情報収集に訪れたといい、その際、火事に遭ったとみられる5人ほどの名前を挙げていたという。

 朝市通りで漆器店を営んでいた小西達雄さん(70)は、地震で多くの周りの民家がつぶれたと振り返り、「こんな寒い中や。早く見つけてあげてほしい。火事がなかったら助かる命はもっとおったはず」と悔やんだ。

 通り沿いにある自宅が全焼した西田晴美さん(85)は、近所に住む同級生2人と火災後に連絡が取れていない。自身も逃げるのに必死で何一つ取り出すことはできなかった。「火事に巻き込まれたんやと思う。ただ涙が流れるだけ」と声を落とした。

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