能登半島地震「こんな揺れは初めて」150年ぶりの大地震 富山でも甚大な被害 なかなか進まない「住宅の耐震化」の実情 大きな被害は静岡も未経験

能登半島地震では多くの住宅が被害を受けています。石川県だけでなく、富山県でも震度5強の揺れで家屋の倒壊が相次ぐなど甚大な被害となっています。見えてきたのは、なかなか進まない「住宅の耐震化」の実情です。

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最大で震度5強を観測した富山県。富山県においては「観測史上最大」です。

特に被害が大きかったのは、能登半島の付け根に位置する富山県氷見市です。

<和田啓記者>
「地震の揺れでガラスが割れてしまったり、家の骨格が歪んでしまったりしています。こちらは、歴史のある酒屋さんですが、1階部分が揺れによって押しつぶされてしまっています」

9日午後1時時点で、確認された建物への被害は974棟となりました。このうち全壊は16棟で、すべて氷見市内の建物です。

<氷見市の職員>
Q.ずれちゃってる?「ずれちゃってますよね」

市の職員が現場を調査して明らかになったのが…。

<氷見市都市計画課 出口学さん>
「築年数の古い家屋が損害が大きいのかなという印象ですね。思った以上にひどかった」

築50年を超える木造の建物が密集している地域で、倒壊はしていなくても建物が歪んでしまった住宅もありました。

<記者>「動かない?」
<家の人>「これ以上開かない。傾いたからでしょうね」
<記者>「入ってわかりますけれど、左に傾いてますね」
<家の人>「傾いてますよ。6尺の戸の間に何センチか隙間ができちゃてる」
<記者>「ちょっとしばらくいると気分が…」
<家の人>「おかしいでしょう」

床に物を置いてみると…転がってしまいます。家の角度が1度でも傾けば、体調に支障をきたすと言われています。

Q.この家は耐震化はしている?
「耐震化って、地震に強くなんて気にもかけてなかったので」

1981年以前に建てられた建物は、耐震性が不十分な場合も多くあるため、自治体が補助金を用意するなど、耐震化を進めています。

2018年時点の「住宅の耐震化率」は、全国平均の87%に対して、富山県全体では80%。氷見市は64%にとどまっています。木造の戸建ては61%です。背景には、高齢化が進み“今更お金をかけて対策する必要性を感じない”という心理があります。

<家の人>「自然の力の恐ろしさは計り知れませんね」

静岡県の地震防災センターでは、耐震化の必要性を実感できる設備があります。左側は「筋交いなど耐震化を施した建物」。右側は「補強をしていない建物」です。

揺らしてみると…。耐震化していない建物は崩れ落ち、中にいる人への影響が想像できます。

静岡県内の耐震化率は約90%。逆に言えば、10%はまだ耐震化されていないということです。

<静岡県地震防災センター 松浦和幸さん>
「一番大事なのは命を守るということ。耐震基準は昭和56年に改正されましたけれど、これは家を守るのではなく、命を守るための基準。今回の災害でも帰省された親戚やご家族が亡くなくなることもあるので、自分だけのことではなく家族全体の命を守ることを認識して、ぜひ対処していただきたい」

時を選ばず元日に発生した巨大地震は、誰もが「今すぐに」備える必要性を示唆しています。

<和田啓記者>
高齢者が耐震化に踏み切れない実情は、静岡県内にも当てはまりますが、高齢者が震災時において真っ先に災害弱者になってしまうのも、また事実です。高齢だから耐震化は必要ないではなく、高齢者こそ耐震化が必要という考えのもと、家族が一緒になって行動に移していくことが大切です。

<井手春希アナウンサー>
富山の方々からはどんな言葉が聞かれましたか?

<和田啓記者>
皆さんが一言目におっしゃるのは「こんな揺れは初めて」ということです。専門家によると、富山県内における今回の揺れ以上の地震は、1858年の飛越地震、つまり150年以上前の江戸時代にまで遡ります。大きな揺れに対する経験値に乏しく、油断があってもおかしくない状況だったのです。静岡県では、2011年に震度6強という揺れを観測していますが、震災による大きな被害は長年経験しておらず、どこまでリアルに想像し対策できるかが問われています。

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