●富山に流れる動きも
能登半島地震を受けて予約キャンセルが相次いだ金沢市内のホテルが、「県外客」でいっぱいになっている。全国から自衛隊や電力会社、行政機関の関係者が復旧支援のため、駆け付けているからだ。インバウンド(訪日客)や観光客の姿がまちなかから消える中、「満室」となるホテルも。金沢市内で宿泊施設を確保できず、富山県内で部屋を押さえる動きも出てきた。
「金沢駅前はもういっぱいだった。能登へのアクセスは少し遠くなるけれど、車なら気にする距離でもない」。11日夜、金沢市大額町にある金沢国際ホテルロビーで鍵を受け取った小売大手の40代男性はこう語った。
9日に東京から石川県入りした後、車で能登と金沢を往復し、店舗の被災状況を確認している。事前にインターネットで調べたところ、金沢駅前をはじめ、北陸自動車道のインター近くのホテルを探したが、数日間連泊できる施設は見つからなかったという。
同ホテルには、地震発生後、約500人の予約キャンセルが入り、宴会も大半がなくなった。一方、奥能登の停電復旧のために訪れた県外の電力会社社員や、医療従事者、マスコミ関係者の予約が一気に入った。
「キャンセルよりも復旧派遣の予約が多く、驚いた」とするのは、まちなかに立地する金沢ニューグランドホテル(南町)の担当者。地震発生後、1月の予約キャンセルが700~800件重なったものの、自衛隊や電力会社、行政機関から千件ほどの予約があった。
金沢駅前のANAクラウンプラザホテル金沢も、復旧支援者の予約がキャンセル数を上回った。
金沢市内では、観光バスが見られなくなった一方、自衛隊の車両や県外ナンバーのマイクロバスが増えている。市内のホテル関係者は「しっかりと支援者に対応することが、能登の支援に間接的につながると思って取り組みたい。経済を回しながら、できることをしていきたい」と話した。
ホテルグランテラス富山(富山市)では、生命保険会社の調査員や電力会社の社員の利用があり、担当者は「『4人で1月いっぱい』など、まとまった期間の利用がある」と話す。既に2月分の予約も入っており、「金沢のホテルを確保できなかった人が富山に流れてきているのだろう」と推測している。