能登半島地震 被災者に寄り添う#1 災害は男女共同参画の試金石 避難所生活を円滑に運営するために

北陸を襲った大地震による災害は「命を守る行動」が求められる急性期から、「守った命をつなぐ」亜急性期に入りました。自宅に住めなくなった人たちは避難所生活を強いられ、今後は長引く避難生活での体調管理が欠かせなくなる慢性期に入ります。東北地方太平洋 沖地震や熊本地震の経験や教訓を3回シリーズで共有します。助けが必要な人も、救いの手を差し伸べる人も復興に向けてどの様な考え方が欠かせないのか、学びましょう。初回は避難所運営における男女の意識の違いや、課題解決に取り組むNPO法人静岡県男女共同参画センター交流会議の元代表理事、大國 田鶴子さんです。

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※SBS・静岡新聞防災プロジェクトTeamBuddyから転載

判断、指示するポジションに女性がいますか?
国は「2020年までにあらゆる分野で指導的地位に占める女性の割合を少なくとも30%程度にしよう」と旗振りしましたが、防災も例外ではありません。むしろ防災こそ、男女共同参画の試金石なんです。「防災訓練には女性も参加しているよ」という男性もいますが、女性も自主防や自治会の防災担当役員という組織はまだ少ないでしょう。対応方針を考え、指示するポジションに女性が決定的に足りないんです。

避難所生活の落とし穴をゲームで体験
近年、避難所運営の課題が浮き彫りになっています。「トイレ」や「性」といったデリケート近かつ避けては通れない事柄です。これらは「女性の立場からの意見が生かされにくい」という運営体制が原因で起こっています。
そこで静岡県が開発した避難所運営ゲーム「HUG(ハグ)※」の本県版に私たちのNPO会員が考えた九つのシチュエーションを入れた「あざれあカード」を追加しました。「DV被害で逃げてきた女性が名簿への掲載を拒否している」「女子中学生が知らない男に抱きつかれたと怖がっている」「性別欄の記入をしてくれない」などは、男性中心の運営体制では手に負えないはずです。避難所で実際に発生して、対応に苦慮した事柄ばかりですから。

「がまんしろ論」が円滑な運営を台無しに
シチュエーションはまだまだあります。「緊急事態だからがまんしろ」という乱暴な論法は避難所の円滑な運営につながらないという事を認識してもらうのが狙いです。じゃあどうしたらいいのか。対話を重ね、男性は、女性も責任者として受け入れ、自分たちの考えを押し付けない、女性は、男性任せにせずに積極的に関わってリーダーを務める―。これって防災に限らず、真の男女共同参画社会の実現に欠かせない根源的な考えでもあるんです。

※HUG…避難者の状態・事情が書かれたカードを、避難所に見立てた平面図に適切に配置し、次々投げかけられるシチュエーションへの対応を模擬体験するゲーム。

防災ポイント:避難所運営編

避難所運営をする時は、本部に必ず女性を登用
男性だけの運営本部では女性ならではの要望をくみ取りきれないからです。

間仕切り、授乳室・洗濯干し場など設置してプライバシーを守ろう
異性の視線を気にせずに作業ができる場所が必要です。

避難所に人気のない場所、暗闇を作らないように!
性に関係する犯罪は表面化しにくいもの。
未然に防ぐ工夫を。

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