栃木県で絶滅危惧種のサンカノゴイ確認 日本野鳥の会調査 全国でもわずか17羽

日本野鳥の会の調査で17羽しか繁殖の可能性があるオスの個体が確認されなかったサンカノゴイ(日本野鳥の会提供)

 日本野鳥の会(東京都品川区、遠藤孝一(えんどうこういち)理事長)は15日、絶滅危惧種でサギ科の鳥「サンカノゴイ」について、繁殖の可能性があるオスの分布状況を調べた結果を公表した。2022年までの3年間、過去に繁殖の記録がある7道県を対象に調査したが、確認されたのは5道県計17羽のみで、栃木県は1羽だった。

 サンカノゴイは、全長約70センチ、羽を広げた際の大きさは125〜135センチ。水深が約20センチあるヨシ原を好んで生息し、魚類などを餌とする。茶褐色でヨシ原に溶け込む保護色のため、「湿原の忍者」と呼ばれることもある。環境省のレッドリストでは、近い将来に野生で絶滅の危険性が高いとされる「絶滅危惧IB類」に分類されている。

 調査は、オスが繁殖期に出す「ウォッヴォーウ」という鳴き声を基に個体数を数えた。2020〜22年の繁殖期(4〜6月)に、北海道、青森県、茨城県では現地調査を実施。千葉県と滋賀県で会員へのヒアリングをし、栃木県と石川県は「全国鳥類繁殖分布調査」を基に文献を調べた。

 結果は、北海道北部と茨城県が各5羽、青森県と千葉県が各3羽、栃木県1羽だった。栃木県に関する文献では2013年以前、多い年で4〜5羽が確認されたが、それ以降は1〜2羽に減少。過去に繁殖が確認された北海道の中央部や東部、滋賀県では今回の調査で確認されなかった。具体的な生息地については、繁殖の妨げになる恐れがあるため公表していない。

 日本野鳥の会は「ヨシなどの植物が、生息地の開発や改修で減少している」と減少の要因を分析。また食物連鎖の上位にいるサンカノゴイの減少は、湿地の場所によっては生物多様性が失われつつある可能性も示唆しているという。

 日本野鳥の会は、サンカノゴイが好む水深20センチ程度のヨシ原を保全するため、行政機関などと協働した保全の働きかけを進めていく方針。

 

現地調査、ヒアリングや既存文献調査で確認できたサンカノゴイの繁殖エリアと個体数

© 株式会社下野新聞社