〈1.1大震災〉「弟が泥の中に」捜索阻む雨 輪島・市ノ瀬、3週間待つ兄

雨の中、安否が分からなくなっている英次さんの自宅付近を捜索する警察官=21日午後1時20分、輪島市市ノ瀬町

 「まだ弟が泥の中にいるんです」。住宅が土砂に巻き込まれ、垣地英次さん(56)ら住民3人が安否不明になっている輪島市市ノ瀬町では21日も消防と警察による懸命の捜索が続いた。雨や雪で捜索活動はたびたび中断し難航。金沢から駆け付けて見守る会社員の兄弘明さん(58)は「仕方がないと分かっていても、悔しい」ともどかしさを募らせる。

 1日の地震発生時、弘明さんは自宅から車で、英次さんが暮らす実家に向かっていた。道路が寸断され、車を置いて20キロほど歩いた。知人の車で3日にたどり着いた故郷は変わり果てていた。山が崩壊し、土砂にのみ込まれた集落。実家は100メートルほど押し流され、1階は倒れた木や石で埋まった。

 英次さんは大学卒業後、金沢で仕事をしていたが、母親の面倒を見るため、約20年前に実家に戻り、瓦ぶき職人となった。弘明さんは「私と違って真面目で、尊敬していた」と弟の人柄を語る。

 兄弟が最後に会ったのは昨年末、母親の四十九日法要だった。英次さんの母校・帝京大が箱根駅伝に出場することから「一緒にテレビで応援しよう」と約束していたという。

 現在、集落の避難所となっている河原田公民館で寝泊まりし、捜索を見守り続ける弘明さんは「一日も早く英次の顔を拭いてやりたい」と言葉を詰まらせた。

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