被災地移住、タクシー運転手に 埼玉の女性地元歓迎「奇特な人おるもんや」

地震後に輪島市に移住し、タクシードライバーとして働く安澤さん=輪島市門前町舘

 能登半島地震の直後、輪島市門前町舘のタクシー会社「鳳南タクシー」に就職した女性ドライバーがいる。埼玉県出身の安澤美佳さん(47)。報道で奥能登の惨状を知り、「体が勝手に動いていた」と3日夜に輪島入りして5日に入社。安澤さんは「この地の仲間になって、一緒に助け合いたい」と被災者のためにハンドルを握る。

 安澤さんは介護士や保育士、旅客運送に必要な「第2種運転免許」などの資格を持つ。埼玉では今川焼き店を経営していたが「必要とされる場所で役に立ちたい」と輪島入り。門前到着後に鳳南タクシーを見つけ、熱意を伝えて入社することになった。同社の下澤敏彦会長は「奇特な人もおるもんやと思った」と振り返る。

 住民票を輪島市に移し、15日からは会社に住み込みで業務を開始。車が壊れた被災者や、病院や買い物に向かう高齢者の足として活躍する。安澤さんは「『ありがとう』の言葉がうれしい。門前に溶け込みたい」と意気込んだ。

 地震で被害の大きかった輪島市、珠洲市、能登町で運行するタクシー業者のうち、2社が営業再開のめどが立たず廃業の見通しとなっている。3市町で車両登録がある約50台のうち3割が減少する見込みだ。3市町は65歳以上の高齢化率が50%前後に上り、タクシーはATM利用や病院の送り迎えに欠かせない。安澤さんは強力な助っ人となりそうだ。

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