長崎県雲仙市産のジャガイモ「ながさき黄金(こがね)」を大手菓子メーカー、湖池屋(東京)がポテトチップスにしてインターネットで売り出し、好評を得た。まだ開発から日が浅い品種で供給が少ないため、同社は昨年、市内生産者らと「雲仙島原チップ用生産組合」を設立。増産に向け、3月末には全自動選果機を備えた大型倉庫が現地に完成する。
「全自動になれば手間も費用もかからず、ありがたい」。同市瑞穂町に建設中の倉庫の前で、同組合関係者の宮﨑賢太郎さん(75)が期待を込めて話した。これまでは市内の選果機を借りてサイズ別に湖池屋に出荷してきた。
新倉庫は鉄筋一部2階建て延べ床面積約500平方メートル。約175トンまで保管できる。総事業費約1億4千万円のうち半額を国と市の補助で賄う。
濃厚な甘み
湖池屋は、全国規模のジャガイモ加工研究会で、ながさき黄金がチップスに適していると知った。「バレイショ界の超新星ブランド。濃厚な甘みとコクがあり、黄色い果肉が魅力」と評価。九州工場(熊本県)開業を機に、流通卸会社ジェーピーシー(東京)に商品化を持ちかけた。
2022年、子会社ジェーピーファーム(雲仙市瑞穂町)の生産分を加工し、期間限定で4万8千袋をネット販売したところ、完売した。そこで、増産を目指して昨年9月、市内生産者やジェーピーシーなどと生産組合を設立。再び同数を売り切った。
小ぶりでも
湖池屋は1玉40~400グラムを買い取る。このため組合生産者は「小ぶりでも売れる」と喜ぶ。昨年は1年目を5トン上回る約25トンを同社に供給した。
組合加入の生産者は3人から現在9人に増えた。計画では、27年までに20人に増員したい考え。ほ場約1.8ヘクタールも5ヘクタールに、生産量約70トンは175トンにそれぞれ拡大を図る。
県農林技術開発センターによると、ながさき黄金は病害虫に弱い品種「インカのめざめ」を改良して15年に開発した。ホクホクとした食感と断面の鮮やかな黄色が特長。白内障などの眼病予防効果が期待される機能性成分「ゼアキサンチン」「ルテイン」を多く含む。栽培面積は全国で10ヘクタール余りにとどまっており、県内ではイオン各店や直売所などで取り扱う。
組合長でジェーピーファーム社長の宮﨑洋平氏は「(チップスの材料に選ばれ)品種の価値を認めてもらった。安定した収益構造を持続していきたい」と意気込みを語った。