戦国時代の城下町、一乗谷朝倉氏遺跡を世界遺産に 福井県福井市、地元有志が機運醸成へ3月法人立ち上げ

南北1.8キロの間に遺構がまるごと残っている一乗谷朝倉氏遺跡=2021年11月、福井県福井市城戸ノ内町

 全国で唯一、戦国期の城下町跡がそのまま残る国内最大の中世都市遺跡として知られる一乗谷朝倉氏遺跡(福井県福井市)の世界遺産登録を目指し、地元有志が3月1日、機運醸成を推進する法人を立ち上げる。遺跡を会場にした定期市や音楽イベントなどを展開し、中世都市遺跡の魅力を内外に発信。登録への賛同を求める署名活動も積極的に行う。

 一乗谷は周囲を山々に囲まれ、南北2カ所の出入り口を土塁や濠(ごう)で固めた天然の要害。しかし1573年、朝倉義景が織田信長に大敗し朝倉氏は滅亡、城下町は灰じんに帰した。約400年後の1967年、そっくり埋もれていた一乗谷の発掘調査が始まり、現在は国の特別史跡、特別名勝、重要文化財の3重指定を受けている。

 金閣寺(京都府)や厳島神社(広島県)など、同様に3重指定となっている5カ所はいずれも世界文化遺産。資産が「顕著な普遍的価値」を有していることが登録条件の一つだが、朝倉氏遺跡では山城の発掘調査がほぼ手つかずで、史跡278ヘクタールのうち発掘研究されているのは1割程度。朝倉氏遺跡保存協会の岸田清会長は「現状では申請できる状況にないと考えられる」と話す。

 遺跡の価値や魅力を発信し、登録への機運醸成がまずは必要として、地元有志が一般社団法人「クリエイティブASUWA」を立ち上げる。世界遺産登録に向けた具体的な動きは初めて。メンバーは、周辺7地区の住民でつくる「夢・創造足羽会」に所属する6人。代表理事に就いた岸田会長を筆頭に、足羽会の山崎栄一会長、道の駅「一乗谷あさくら水の駅」(福井市)の藤田勝己副駅長らが準備を進めてきた。

 にぎわい創造事業として、地元名物を販売するテント市、バイオリニストの葉加瀬太郎さんが作曲した一乗谷テーマ曲の演奏会、一乗滝周辺でサウナや川床を楽しめる催しなどを計画中。首都圏のメディアへのアプローチや、朝倉氏とゆかりのある北陸新幹線沿線の歴史名所との連携も模索していく。

⇒戦国時代の一乗谷は鍋がない町

 外国人や若者の訪問を期待し、日本独自の文化である妖怪とアニメを組み合わせたプロジェクトも始動する。人気妖怪アニメを手がけたキャラクターデザイナーらが生み出した妖怪が、一乗谷の地下に残る城下町に住み着くとの設定でイベントを展開する。

 新法人の設立は北陸新幹線の県内開業時期に合わせた。民泊施設の拡充や、新幹線開業後を想定した観光モデルコースの策定にも着手する。岸田会長は「多くの方から賛同をいただけるよう先頭に立ち、行動していきたい」と意気込む。

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