うつ病、調査票で発見 自殺抑止効果に期待 青森県立保健大、7市町村と共同事業

 青森県立保健大学の大山博史教授の研究室が自殺対策として県内7市町村と共同で行っている「うつ病スクリーニング」事業が、自殺率低減に効果があるのではないかと注目されている。調査票を通して住民の心の健康状態を確認し、フォローアップすることで各市町村の自殺死亡率が減少する傾向が見られるという。大山教授は「スクリーニングと他の自殺予防事業を並行して行うことで、有効な自殺対策となる」と語る。

 うつ病スクリーニングは同大が2005年から実施。現在行っている県内自治体は平川市、五戸町、南部町、おいらせ町、七戸町、横浜町、新郷村。

 調査の対象となる住民へ問診票を配布し「気分の落ち込みがないか」や「眠れているか」などを聞き、回答者に対してうつ症状があるかどうかの結果を通知。必要に応じて相談に対応する。深刻なうつ状態の人には専門医の受診を勧める。

 連携している市町村では自殺死亡率が減少する傾向が見られる。大山教授が、事業を実施している県内5市町村で調査を行ったところ、通常の自殺予防事業を行っている県内6市町村に比べ、40~64歳の自殺死亡率の平均が4年間で顕著に下がっていることが分かった。

 08年からうつ病スクリーニングを実施している平川市の担当者は「うつ病の早期発見につながっている」と述べた。同市の21年の自殺死亡率(全年代、人口10万人当たり)は13.2と、13年の42.5に比べ約3分の1に減っている。

 8年ほど前から事業を実施している五戸町健康増進課の担当者は「心の不調を訴える人が医療機関につながったケースがあった」と語る。

 大山教授は「自殺に追い込まれるきっかけはさまざまだが、最終的にうつ状態を経て自死する人が多い。多重債務や長時間労働などの生活・労働問題や健康問題を抱え、心の健康が損なわれている」と説明。「うつ状態(うつ病)は治療可能。スクリーニングとともに、相談窓口や交流サロンの場の開設、(悩んでいる人の話を聞いて支援につなげる)ゲートキーパー活動を行うことで、自殺を考えるほど追い込まれている人を救い出すことができる」と語った。

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