対応検証の会議新設 県、防災計画見直しへ

能登半島地震で倒壊した建物=31日午後3時ごろ、氷見市北大町

  ●能登半島地震1カ月

 富山県は新年度、能登半島地震での対応を検証する会議を新設する。県内過去最大となる震度5強を観測し、津波警報も発令された今回の地震では、沿岸部の住民が山あいの別の自治体に逃げ込むなど、想定外の事態が起きた。避難や初動対応のあり方などをあらためて協議し、地域防災計画や各種マニュアルを見直す。能登半島地震の発生から1カ月となるのを前に、新田八朗知事は31日、富山新聞社の取材に応じ「何ができて何ができなかったのか、記憶の新しいうちに取りまとめて後世に残し、今後に備えたい」と意欲を語った。

 県議会最大会派・自民党議員会と第2会派・自民党新令和会が31日、新年度予算に関する県との折衝を行い、新田知事が方針を示した。新年度予算案に2千万円を計上する。

 会合は冒頭を除き非公開。終了後に取材に応じた自民党議員会の永森直人政調会長は、短期、中期、長期と局面に合わせた復興復旧プランの策定を求め、新田知事から「庁内で検討に着手している」と返答があったとした。

 今回の地震では、津波が来るとパニックになった住民が小学校の塀をよじ登り、窓ガラスを割って校内に侵入したケースが見られた。新田知事は発災当初について「『避難所が開いていない』との問い合わせが県にもあった」と明かす。

  ●木造耐震化の予算倍に

 県は、木造住宅の耐震化に関する予算も今年度から倍増し、1億5590万円を盛り込む方針。地震によって県内でも多くの建物被害が確認され、耐震化の遅れも指摘される中で、耐震改修の補助上限を引き上げるなど、早期診断や改修を進め、改善に努める。

 永森氏によると、県からは1月1日の発災以降、耐震化に関する228件の相談が寄せられ、昨年4~12月の156件を大幅に上回っているとの説明があった。

 政府の推計によると、県内で損壊した住宅や工場、道路などの被害額は1千億~5千億円となっており、住宅の耐震化が進んでいないことで被害が広がったと見る向きもある。

  ●中小に融資枠追加

 県は、県内全域の中小企業を対象にした震災対策特別融資に関し、新たな融資枠を検討している。自民党新令和会の庄司昌弘政調会長によると、県側からは「被災した企業はもちろん、取引先にもかなりの影響が出ている」との指摘があった。

  ●氷見の全壊81件に 半数は市中心部

 氷見市は31日、全壊住宅が81件になったと発表した。全壊は市中心部の栄町、北大町、地蔵町、幸町で半分以上を占める。半壊は128件、一部損壊は602件となっている。

 富山県の30日午前9時時点の集計では、住宅被害が6058件となっている。全壊が87件、半壊が248件、一部破損が5106件。県によると、震源に近い県西部の沿岸部で、液状化現象などによる被害が多数確認されているという。

 県管理公共土木施設は195カ所で壁面損傷や照明落下などが見つかり、農林水産関係の被害は2309カ所で確認された。

 氷見市を中心に一時約1万9千世帯が断水したが、21日までに完全復旧した。

 人的被害は、富山市の中学1年の男子生徒1人と30代女性1人がそれぞれ輪島、珠洲市に帰省していた際に被災し死亡した。県内では重傷が富山市の2人と射水市の1人、軽傷は44人の計47人となっている。

 砺波市は31日、新たに住宅2件で外壁などの破損が見つかったと発表した。

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