京都市の「耐震不足」なお7万戸超 路地に密集、改修はばむ法の存在も

細い路地に密集する木造住宅。耐震化や防火対策、避難経路の確保などが課題となっている(1月、京都市東山区)

 建物倒壊により多くの人が犠牲となった阪神大震災などの経験や教訓を踏まえ、耐震改修を進める京都市では、住宅の耐震化率は90%に達した。ただ、耐震性が不十分な「旧基準」で建てられた住宅が約7万3千戸残っており、専門家は「新築住宅やマンションが増えれば数値は上がる。耐震化率だけで判断するのは危険だ」と指摘している。

 1995年の阪神大震災では、耐震基準が現在より甘かった81年以前の「旧基準」の木造住宅の倒壊が相次ぎ、死者の約9割が圧死だった。国は「2030年までに耐震性が不十分な住宅をおおむね解消する」とするが、今年1月の能登半島地震でも、倒壊被害が目立った石川県珠洲市や輪島市では、依然として旧基準の建物が半数を超えている。

 京都市の20年度の調査では、旧基準で建てられ、耐震性が不足している住宅約9万9700戸のうち、改修済みは約2万6500戸と4分の1程度にとどまり、耐震改修が停滞している。

 耐震化が進まない理由について、市は費用面をはじめ、後継者がいないために耐震化に消極的だったり、空き家で活用方法が決まっていなかったりすることなどを挙げる。また、市内には細街路に古い木造住宅が密集する地域が多い。建築基準法上、原則、幅4メートル以上の道路に2メートル以上接していないと建て替えや大規模改修ができないことも背景にあるという。

 京都大防災研究所の牧紀男教授(防災学)は「耐震化の必要性が分かっていても進まず、能登半島地震では被害につながった。耐震化をためらう市民の意識を変えるなど、旧基準の住宅の改修を実行するための方策をもう一度考えるべきだ」と強調する。

 住民側の模索も続く。東山区今熊野学区は木造家屋の密集地や細街路が多く、直下型地震が起きれば、建物の全半壊や火災などが予想され、避難や安全確保が課題となっていた。

 住民は自主防災会を中心に18年度から3年かけ、町内ごとに危険箇所を抽出。路地入り口部分にある建物の耐震化や2方向の避難経路の確保、延焼防止などの方策を防災計画にまとめ、課題解決に取り組んでいる。同会副会長の樋口博紀さん(46)は「平時から災害に強いまちづくりを進めつつ、避難所運営の在り方など被災後の対応まで考える必要がある」と話す。

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