人口減「一気に20年分」 輪島市町野・金蔵、90→14人に

被災者の多くが地域外へ避難した輪島市町野町金蔵。残った住民は集落存続へ危機感を募らせる=1日

 「たった1カ月で、ほとんど人がいなくなった」。輪島市の山あいにある町野町金蔵。区長の井池(いのいけ)光信さん(68)は集落消滅への危機感を口にする。1月1日以前は53世帯90人が暮らしていたが、2月1日時点で14人にまで減少。「いつか戻りたい」との声は多いものの、土砂でふさがれた市街地への道路は復旧が見通せず、そのまま地域を離れてしまう可能性もある。

 金蔵では地震で3割近くの家屋が損傷し、残った住民が集会所でほそぼそと暮らす。市街地へ向かう道路は寸断され、支援物資を受け取りに行くだけで1時間近く車を走らせなければならない。

 不便な生活が長引く中、集落からは次々と住民が離れていった。ある人は市街地の避難所へ、ある人は金沢の子どもの家へ。井池さんは2050年に集落の人口が11人になるとした国の推計を引き合いに「人口減少が約20年分も進んでしまった」と嘆く。

 井池さんらとともに集会所に避難する石崎英純さん(73)は「これ以上人が減ったら、集落が消えてしまう。何とか金蔵に仮設住宅を建ててもらうことはできんかな」と話した。

 帰り際、地震前に撮影した集落の写真を見せてもらった。春は桜やツツジが咲き乱れ、秋は一面の棚田が金色に染まっていた。「本当にきれいな場所。またここに家を建てたい」。井池さんの言葉にうなずいた。それほど、写真の中の景色は美しかった。(社会部・織田琢郎)

© 株式会社北國新聞社