社説:災害ごみ 復旧加速へ広域処理を

 能登半島地震の被災地で、倒壊した建物のがれきなど大量の「災害ごみ」の片付けが大きな課題となっている。

 石川県内では計244万トンに上ると推計され、県全体の年間ごみ排出量の約7年分に相当する。中でも、被害の大きかった半島北部の奥能登地域では59年分という膨大さだ。

 発生1カ月を経ても、各所で家屋や電柱が倒壊したまま道路をふさぐなど、インフラ復旧や生活再建の妨げとなっている。

 被災地内での対応には限界がある。復旧・復興を加速するため、自治体の枠を超えた広域的な連携で処理を急ぎたい。

 大量の災害ごみは、古い木造家屋や、納屋、蔵などの建屋が多い能登地域の特性も影響しているという。地元の廃棄物処理施設も被災した上、道路の寸断で大型車両が入れない地域が多く、ほとんど搬出が進んでいない。

 県は、幹線道路の本格復旧には時間を要し、陸路の輸送は滞る恐れがあるとして海上輸送も活用する方針だ。県外を含めた広域対応を進め、2025年度末の処理完了を目指すとした。

 海上輸送は、16年の熊本地震でも行われ、木くずをコンテナ船などで三重県に運び、災害ごみ総量311万トンの約16%を県外で処理した経験がある。

 石川でも最寄りの港から積み出す考えで、被災した港湾施設の復旧と、円滑に運び出すための体制整備が課題となろう。

 能登半島は険しい地形で平地が少ない。仮設住宅などの建設とも並行し、災害ごみの仮置き場や中間処理施設の用地確保が容易でない事情もある。

 輸送の負荷を減らすため、地元でのリサイクルも重要だ。

 東日本大震災では、建物のがれきなどを復旧工事で舗装道路の下地といった材料に使い、約8割を再利用した。

 仙台市の海岸堤防の復旧でも廃棄物の再利用で大型トラック約5万台分の輸送を減らし、渋滞緩和にもつながったという。こうしたノウハウを生かしたい。

 全壊や半壊の住宅を対象とした公費での解体は石川県内16市町で実施予定で、3月にも本格化する。市民ボランティアの援助も広がり、壊れた家財などの運び出しも急増する見通しだ。

 近隣府県をはじめ広域的な受け入れ・処理や職員の応援などで協力を進めつつ、各自治体の災害時の対応も再点検したい。

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