社説:盛山文科相 宗教所管の適性を欠く

 宗教行政を所管する文部科学省のトップであり、不適任と言わざるを得ない。

 盛山正仁文科相が2021年の衆院選に際し、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関連団体から選挙支援を受けていたとの疑惑が浮上した。

 盛山氏は「記憶はない」「確認できない」と繰り返すばかりだ。解散命令請求手続きが進む教団への対応を担う文科相の職責を全うできるのか、甚だ疑問である。

 盛山氏はきのうの衆院予算委員会で、「報道された写真を見て、こういうことがあったのかなとうすうす思い出してきた」と述べ、教団側の推薦確認書への署名を事実上認めた。

 衆院選公示前に教団関連団体の会合に出席し、教団側が掲げる政策への賛同を求める内容にサインして推薦状を受領、選挙支援を受けていたとみられる。いわば「政策協定」ではないか。

 教団と自民党の関係は、安倍晋三元首相銃撃事件を契機に問題化し、22年9月公表の党調査で所属国会議員180人に教団側との接点が確認された。盛山氏は「関連団体の会合に出席し、あいさつ」とだけ自己申告していた。

 「選挙支援は依頼していない」「記憶はなかったので、自民党にも報告していなかった」との釈明をうのみにはできない。党調査がいかにずさんだったか、改めて浮き彫りになったとも言える。

 岸田文雄首相は「自ら説明責任は果たしていただきたい」として野党の更迭要求を拒んでいる。しかし、あいまいな姿勢に終始して適格性を欠く人物を任命し、かばい続ける首相も責任を免れまい。

 とりわけ宗教行政の指揮を執る文科相は、教団との関わりで疑念を招いてはならない。文科省は昨年10月、高額献金被害の訴えが相次いだ教団の解散命令を東京地裁に請求。近く地裁が双方から意見を聴く審問が始まる。

 教団側との「政策協定」があったとすれば、盛山氏は利益相反も疑われる。「現在は関係を遮断」(岸田氏)との弁明は通用しない。即刻辞任すべきである。

 岸田氏は「過去を反省し、関係を絶つ」と宣言した。だが、党政調会長時代に教団関係者と面会していたとされる首相自身や、新たに接点が発覚した林芳正官房長官を含め、教団との「蜜月」関係は未清算と疑うほかない。

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件とともに、政権政党の姿勢が問われている。

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