タイトル戦20連勝

 「攻め将棋のイメージが強かったが、現在はむしろ受け将棋」「積極的な斬り合いも超一流なのに、堂々と手を渡して相手の言い分を聞く」と弟子。「ちょっとでも差を付けられると取り返しがつかないという意識が常に働いているから本当に難儀だ」と師匠▲将棋の深浦康市九段=佐世保市出身=と佐々木大地七段=対馬市出身=の師弟が昨秋、専門誌の対談で「藤井将棋」をこう分析していた。佐々木七段の藤井評は「最初のチャンスは見送る」の名言で知られる故大山康晴15世名人の将棋に通じる響き▲王将位の防衛に成功し、藤井聡太八冠のタイトル戦連勝記録がその大山を抜いて史上最多の「20」に達した。番勝負が最終局までもつれたケースさえ一度もない盤石の強さだが▲昭和の将棋界に君臨した大山にはもう一つ、1957年の春から67年の秋まで全てのタイトル戦に保持者か挑戦者のいずれかとして登場し続けたという驚きの大記録がある。“大山のいないタイトル戦”は10年超の間、一度もなかった。その数50期▲藤井八冠の連続登場は現在開催中の棋王戦5番勝負で計11期。来年の王将戦までは登場が決まっているから、数字が「18」まで伸びることは確定している▲先人の偉大な足跡を照らして進む“1強”のまばゆい光。輝きはどこまで。(智)

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