九州女子サッカーリーグ1部得点王 井手心愛(国見レディース、鎮西学院高3年) 人間的に伸びた3年間

「まだ成長できる」という思いを胸に練習に励む井手=諫早市、鎮西学院高グラウンド

 昨年4~12月に行われたサッカーの九州女子リーグ1部。国見レディースのFW井手心愛(鎮西学院高3年)は持ち味のスピードを生かして通算13ゴールを奪い、成年選手を上回って得点王に輝いた。それを知ったときは驚き、こう思った。「この結果は仲間のおかげ」。高校3年間の集大成となるタイトルを喜ぶと同時に、感謝の気持ちが込み上げた。
 サッカーを始めたのは相浦小3年生のとき。2歳上の兄の影響で学校の男子チームに入った。仲間と一緒にプレーする楽しさや得点する喜びを覚え、6年生でエースナンバー「10」を背負った。中学では地元のクラブ「キララ」に入部。ここでも男子と一緒にボールを追いかけた。
 高校では、中学までなかった上下関係、部内ルールの厳しさへの順応に苦労した。肉離れや捻挫などのけがも重なり、思うようにプレーできない時期が続いた。
 そんな高校生活にも慣れてきた2年時から、九州女子リーグに参戦している国見レディースにも選手登録。だが、そこでも壁にぶつかった。当初は体格差への恐怖や緊張で「自分の思い通りの動きができなかった」。高校生同士の試合とは違う高いレベルを痛感した。
 一つの転機は高校が新チームになって主将を任されたこと。国見レディースのチームメートでもある鎮西学院高女子サッカー部の桜井みゆきコーチが「プレーに責任感が出てきた。自信を持って挑めていた」と精神面の変化を感じたという。3年生になった昨年は、九州女子リーグの開幕戦でチームを勝利に導くゴール。第8節福岡大戦はハットトリックを達成した。
 二つのチームでプレーしながら学んだことは「声かけの大切さ」。国見レディースでは先輩たちが常にリードしてくれた。気持ちを落ち着かせてサッカーに向き合うことで自然と周りが見えるようになった。高校では引っ張る立場になり、今度は自分が先輩たちがしてくれたように、仲間と積極的にコミュニケーションを取った。3年間で技術だけでなく、人間として成長できたと思う。
 卒業後は武蔵丘短大(埼玉)に進学してサッカーを続ける。保健体育の教員免許取得を目指しつつ、同じルートでなでしこリーグ入りした高校の先輩のMF松本莉緒(ニッパツ横浜FC)やFW坂田美優(ヴィアマテラス宮崎)に続きたいという思いもある。「もっと決定力を上げたい。まだ成長できるはず」。そう信じて、いつか2人を追い越したい。

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