アメリカ有機農家が語る「食の安心安全」買い手と築く相互扶助「ビジネスというより友人」

野菜の代金を消費者に前払いしてもらい作付けする農業をしているヘンリーさん(南丹市八木町・旧新庄小)

 米イリノイ州の有機農家で、会員に野菜代を作付け前に支払ってもらい、収穫物を毎週取りに来てもらう「地域支援型農業(CSA)」を続けるヘンリー・ブロックマンさん(60)が、京都府南丹市八木町で講演した。経営面の利点に加え、環境や食の安心安全に思いを同じくする消費者と相互扶助の関係を築く喜びを語った。

 ヘンリーさんは10ヘクタールの農場で有機栽培をしている。トマト80種、レタス50種など多彩な品種に加え、ゴボウなど米国では珍しい作物もあり、育つ野菜は約600種類という。

 CSAは欧米で普及するシステムで、ヘンリーさんは2000年に導入した。近くの町の約200世帯に年間の野菜代各500ドルを前払いしてもらう代わりに、6~11月の計26週間には週1回、朝採れの約7種類を提供している。

 種苗や資材の購入で「お金が必要なのは冬から春。事前に収入を得られるメリットは大きい」と語る。新鮮な有機野菜を「お金のある人以外にも提供したい」と願い、コストになる配達や袋詰めはしない。毎週決まった1時間のうちに、町の教会の駐車場に並べた箱から会員が野菜を持って帰る方式を採る。

 各週の野菜セットは原則一律だが、苦手なものを残していけば欲しいものを取ってよい「シェアボックス」を設けたり、好みの分かれるパクチーはバジルと選択制にしたりし、好き嫌いに対応していると工夫を紹介した。

 会員とは「ビジネスというより友人関係。自分は有機農業で環境を大切にしたい。消費者は安心して食事ができ、お互い感謝している」。全員と顔見知りで、毎週の受け渡しではファーストネームで呼び合いながら農場の近況を話したり、野菜のお薦めレシピを渡したりして「コミュニケーションを大事にしている」と強調した。

 近隣の世帯分を代表者がまとめて受け取る場合もあるが「翌年への更新率は、自分で取りに来る人のほうが圧倒的に高い。会わないと絆は太くならない」と指摘した。

 現在は妻で日本出身のヒロコさん(62)や従業員4人と営む。かつて手伝っていた子どもたちも独立し、夫妻ともに60代。「身の丈に合うように小さくしたい。私はファームマネジャーではなく、ファーマー。農作業をしてこそ面白い」

 講演はヒロコさんの帰省などで夫妻が来日していた1月24日、八百屋「369(みろく)商店」が旧新庄小で主催した。

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