V長崎 カリーレ氏の二重契約問題 毅然と対応、選手は前向き 「やることをやるだけ」 

V長崎と契約を更新しながら、ブラジル2部サントスの指揮を執っているカリーレ氏=昨年11月4日、諫早市のトランスコスモススタジアム長崎

 昨年12月20日に降って湧いたファビオ・カリーレ氏の二重契約問題。同11月にV・ファーレン長崎と続投の契約を結んだにもかかわらず、ブラジルの名門サントスの監督に就任したい意向を示し、サントスが招へいを発表した。V長崎は「一方的な契約破棄による違約金の支払いを求めるべき」として毅然と対応。正式な手続きを再三求めたが話は進まず、カリーレ氏らを国際サッカー連盟(FIFA)に提訴する準備を進めている。
 関係者によると、カリーレ氏との昨季までの契約は昨年12月末でいったん終了。新たな契約期間のスタートは2月1日だった。その間の1カ月は“フリー”の状態であるが、税制上の都合で、このような契約期間になるのが通例という。
 サントスはこの「空白期間」を根拠に1月13日未明、公式SNSで「カリーレ氏とV長崎の契約が終了していたことを確認した。長崎との交渉を終了する」と正当性を主張。カリーレ氏をブラジルサッカー連盟に監督登録したと発表した。
 ただ、その前日に両クラブが開いた会談では、サントスから謝罪と2億円を超えるとされる違約金の減額要請があったという。2月以降は「二重契約」になると非を認めていたのは明らかだ。
 会談でV長崎は減額を拒否し、サントスは翌日に一方的な発表をした。不可解な言動を繰り返す名門クラブに対し、V長崎は「当事者間での解決は不可能」と判断。1月19日、サントスとカリーレ氏、行動をともにするコーチ3人をFIFAに提訴すると発表した。
 Jリーグの「二重契約問題」で記憶に新しいのは2021年にJ1磐田に加入したコロンビア人FW。タイのクラブから22年4月にFIFAへ提訴され、同9月に磐田に対して補強禁止などの処分が下された。磐田は不服としてスポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴したが同12月に棄却された。今回も解決まで長期間を要する可能性がある。
 クラブ初の外国人監督として迎えられたカリーレ氏は、期待に応えられないまま1年半で去り、既にサントスで指揮を執っている。V長崎も下平隆宏ヘッドコーチを迎えて指導体制を再構築。混乱はなく、選手から「カリーレが良かった」という声は聞かない。むしろ「自分が生きるシーズンになる」「指揮官が代わってもやることをやるだけ」とポジティブだ。
 災い転じて福となす。地球の裏側に、J1昇格という結果を見せつけるしかない。

© 株式会社長崎新聞社