1回で終わらない関係に…オール福井で観光客受け入れ 福井県若狭町「熊川宿」拠点のデキタ・時岡壮太社長

北陸新幹線敦賀延伸後のまちづくりの展望を語る「デキタ」の時岡社長=2月13日、福井県若狭町熊川

 北陸新幹線の福井県内開業効果をいかにまちづくりに生かすか。2018年に東京から福井県若狭町の宿場町「熊川宿」に拠点を移し、空き家を活用した宿泊事業などを手がける「デキタ」の時岡壮太社長(43)は「嶺南にはポテンシャルの高い宿泊施設が多くある。嶺北を観光した人に嶺南で宿泊してもらうなど、オール福井で観光客を受け入れ、1回で終わらない持続的な関係を構築していかなければならない」と強調する。

 ―熊川宿に本社を移転した理由は。 「東京で商業施設などを開発し、大きいお金を回していく仕事は達成感があったが、人口減少や高齢化、空き家の増加など多くの課題を抱える田舎で、その地域の資源を生かした経済の循環を生み出す仕事をしてみたくなった。お金のためではなく地域、自然、文化を守ることにやりがいを感じる」

 ―北陸新幹線敦賀延伸への期待は。 「観光面で言うと、福井の名前が露出する機会が増えるのはチャンス。全国的に知名度は低いが、都会の人たちにとって、福井のように人の少ない静かな環境で癒やされたいというニーズはあると思う。伸びしろは大きい」

 ―熊川宿の宿泊客は増えるか。 「私たちが運営している宿『八百熊川』はすでにインバウンド(訪日客)の利用が増えてきている。23年の年間宿泊客数は約2千人で約15%が訪日客だった。多い月は約30%に上った。夕食は地元の有志の会が調理した郷土料理を提供しており、訪日客からは『ファンタスティック』『宝石のよう』などと喜ばれ、手応えを感じている。訪日客の動向を見ると京都や金沢を訪れた後、その足でレンタカーを使って来ることが多い」

 ―開業効果をどのようにまちづくりに生かすか。 「福井に来た人たちに再度訪れてもらえるよう、つながりのチャンネルを増やしていきたい。3月20日には熊川宿の近くで複合アウトドア施設『山座熊川』をグランドオープンさせる。豊かな自然を生かし心身の健康増進を図る『ウェルネスツーリズム』として福利厚生で企業に利用してもらったり、自社で製造している土産品のファンを増やしていったり、さまざまな切り口で関係人口を増やしていきたい」

⇒アウトドア施設「山座熊川」どんな施設?

 ―持続可能なまちづくりに向け心がけていることは。 「まちづくりには多くの仲間が必要で、今後社員を増やしていく計画。人口減少、高齢化など課題先進地域の田舎は、若い世代にとって、やりがいを感じながら活躍できる舞台でもある。まちづくりに挑戦したい移住者を受け入れる環境もつくっていきたい。それも地域経済の循環につながるはずだ」

ときおか・そうた 1980年、福井県おおい町生まれ。若狭高校、早稲田大学大学院卒。東京の建築開発コンサルティング事務所で勤めた後、2011年に独立し「デキタ」創立。築地場外市場の整備事業などに携わる。18年に拠点を移した福井県若狭町の熊川宿で手がける古民家宿「八百熊川」は、21年度「ふるさと名品オブ・ザ・イヤー」の地方創生賞に選ばれた。  ×  ×  ×

 3月16日の北陸新幹線福井県内開業を契機とした新時代の福井のあり方を探る長期連載「シンフクイケン」は第7章に入りました。テーマは「福井へのエール」。食や2次交通、まちづくりなど各分野の関係者6人に開業への思いや期待を聞き、福井の発展の可能性を探ります。連載へのご意見やご感想を「ふくい特報班」LINEにお寄せください。

シンフクイケン・各章一覧

【第1章】福井の立ち位置

【第2章】変わるかも福井

【第3章】新幹線が来たまち

【第4章】駅を降りてから

【第5章】ハピラインにバトン

【第6章】福井が変わる

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