輪島塗に坂氏の仮設工房 3月上旬完成、職人早期復帰促す

仮設工房の建設に向け、坂茂建築設計のディレクターと打ち合わせをする桐本さん(右)=20日午後1時、輪島市杉平町

  ●杉平町「キリモト」敷地に 「紙管」の柱、施工1日 

 能登半島地震で甚大な被害を受けた輪島市に世界的な建築家坂茂(ばんしげる)氏(66)が手掛ける輪島塗の仮設工房が建設される。直径20センチの「紙管(しかん)」と呼ばれる紙製の筒を柱にした平屋建てで、施工期間が1日という短さが特長。杉平町の漆器工房「輪島キリモト」が敷地内に整備し、被災した漆器職人に早期の復帰を促す。

 仮設工房はビールケースに土のうを詰めて建物の基礎とし、「紙管」を構造材に使用。合板を壁にして建てる。縦3.6メートル、横6メートルで、来月上旬に着工、完成する見通し。坂茂建築設計(東京)が仮設住宅用に考案したものを応用する。学生ボランティアらが作業に参加し、壁部分は中東(能美市)の合板を使用する。

 キリモトは朝市通りにあった元店舗が全焼。市内2カ所の倉庫は商品などが散乱している。職人の中には県外の実家に仕事道具を持ち帰って作業を続けるケースもあるが、「仕事がないなら職人を辞める」と話す人も出てきているという。

 仮設工房をめぐっては、国が設置を検討し、中小企業基盤整備機構が市町村に整備費用の全額を補助する方向だが、まだ具体的には決まっていない。

 桐本泰一代表は、職人は手を動かさないと技術が鈍り、モチベーションも下がるとし、「職人が別の産地で就職したり、職人を辞めたりしてからでは遅い。待っていては輪島塗がなくなってしまう」と考え、自費で仮設工房を整備することにした。

 20日には坂茂建築設計のディレクター2人が建設地の確認に訪れた。職人が使っていた工房を見たほか、窓の大きさ、ドアや配線の位置などを打ち合わせた。

 自宅が全壊し、杉平町の本店で避難生活を送る桐本さんは、「みんな被災してそれどころではないが、誰かが先陣を切らないといけない」と話した。

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