航路維持に地元安堵 大間-函館フェリー 迫る耐用期限が課題に

2024~28年度の運航が確定した大間-函館間を結ぶフェリー「大函丸」=23年8月、大間町のフェリー埠頭(ふとう)

 大間-函館間を結ぶフェリー航路は、青森県や下北5市町村による新たな経費負担の枠組みが整い、2024年度から5年間の運航が継続される方向となった。大間町などの関係者からは「航路維持にほっとしている」「観光振興と誘客の推進につなげられる」などと安堵(あんど)の声が相次いだ。ただ現在運航するフェリー「大函丸」は28年度に耐用期限を迎える。町は、新船建造を含めた29年度以降の航路の在り方を議論するという次なる課題に向き合うことになる。

 県の24年度当初予算案が発表された20日、大間町の野﨑尚文町長は取材に対し「指定管理料の5割を県が負担してくれることは大変ありがたい。負担に協力してくれた近隣4市村にも感謝している」と述べた。大間町観光協会の大見義紀会長も航路維持を喜びつつ、町内への観光客数が新型コロナ禍以前の水準近くまで戻っている実感がある-と強調した上で「フェリーの認知度を高め、大間を訪れる観光客を増やすための方策を検討したい」と意気込んだ。

 同航路は大間町が大函丸を建造し、指定管理者の津軽海峡フェリー(北海道函館市)が指定管理料なしで運航を担う「公設民営方式」で13年度から運営してきた。これが24年度からは毎年度1億5千万円の指定管理料を県と下北5市町村で負担する枠組みに変わる。県は7500万円、大間町5千万円、むつ市1千万円、東通村、風間浦村、佐井村は各500万円を支出する見通しだ。

 町によると、同航路は17年以降、毎年1億円超の赤字が続き、新型コロナ禍の20年以降はこれが2億~3億円に拡大している。

 公費で航路を支えることに理解を得るためには、まずは収益改善が不可欠となる。このため町は来年度以降、交流サイト(SNS)を活用したPRや、町内事業者と連携した周遊型観光プランを計画するなどの利用促進策に取り組んでいく方針。函館市を訪れる台湾などからの訪日客もターゲットに考えている。

 一方、航路の在り方に関する議論は、曲折が予想される。13年4月に就航した大函丸は総建造費約26億円のうち県と鉄道・運輸機構が5億円ずつ負担し、残りを町が起債で賄った。しかし、資材高騰で建造費上昇が見込まれることや、大間原発の建設工事が進まず運転開始に伴う税収が見通せない中で、大函丸の時のように町が主体となって建造する形は「考えられない」(町関係者)のが現状だ。

 野﨑町長は「観光面の促進に加え、防災航路としての位置付けを高めたい」と話す。議論に当たっては「町と津軽海峡フェリーだけでなく、県や近隣4市村と協議できる方法も模索したい」との考えを語った。同町以外の首長からは「東通原発や使用済み核燃料中間貯蔵施設(むつ市)がある下北で、大間-函館航路には防災航路の役割がある。もっと県が関与してもいい」との声も上がっている。

© 株式会社東奥日報社