未来を守る「量り売り」 長崎・諫早の門田さん 看護師からショップ開店、食で環境保護を

量り売りの店を開き環境保護を訴える門田さん=諫早市、Seesaw

 子どもたちが住む未来の地球環境を守りたいと、長崎県諫早市飯盛町で食品や生活雑貨を量り売りする女性がいる。ごみゼロの店を意味するゼロウェイストショップ「Seesaw(シーソー)」店主の門田玲奈さん(31)。
 同町出身の元看護師。愛知県の病院で働きながら看護学校を卒業し、関西の総合病院で約3年間勤務。結婚、出産を機に2019年、自然豊かな環境で子育てしたいと家族とともに古里にUターンした。
 交流サイト(SNS)で気候変動や環境問題について知った。大雨による洪水の他、森林火災や北極の氷が溶けて動物たちが命を落としている事に胸を痛めた。「温暖化という言葉だけは知っていたが、自分の周囲では無関心な人がほとんど。動物も人も同じ命。このまま経済優先の社会が続けば、未来の子どもたちが危ない」
 思い立ったら行動しなければ気持ちが収まらなかった。暮らしから見直そうと、電力会社を再生可能エネルギー利用の会社に変え、海洋汚染や地球温暖化につながるプラスチック製品の新規購入をやめ、野菜中心の食生活に切り替えた。食品を購入する際には同時にトレーや袋などの「ごみ」も買っていると気づき、ゼロウェイストショップの開店を決意した。量り売りであれば、包装材のプラスチックフィルムや紙類を使い捨てにせず、焼却時に発生する二酸化炭素(CO2)も削減できる。
 京都市の量り売りスーパー「斗々屋」で研修を受け22年9月、空き家になっていた実家を改装して店をオープンした。オーガニック食材や、適正な価格取引で生産者の生活を支えるフェアトレード、輸送の際の環境負荷を抑えた商品にこだわる。店内にはスパイスやナッツ、古代小麦のパスタなどの他、シャンプーなどが並ぶ。空き瓶やバッグなど何度も使用できる容器を持参してもらい、量り売りしている。店の陳列台は廃材を利用して夫が制作してくれた。
 「環境問題は1人だけで取り組んでも意味がない。ごみの出ない買い物が当たり前になるよう、長崎でも広めていきたい」。熱い思いを胸に、市内外のイベントにも積極的に出店して地道な活動を続ける。
 十分な利益が出るほどの売り上げはまだない。門田さんは「貯金はなくても、古里に戻って以降、心が満たされていると感じる」と明かす。豊かな自然環境の中で家族と過ごす時間も増えた。今後の目標は、実家の畑で、自給自足を目指し野菜を有機栽培する事。「将来は野菜もプラスチックフリーで販売できるようになれば」
 誰もが関わる「食」を通じて環境保護を訴える。門田さんの挑戦は始まったばかりだ。

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