長崎・眼鏡橋近くにインド寄贈のガンジー像を設置、住民ら困惑 長崎市幹部「核保有国のため平和公園認めず」

長崎市が作成したガンジー像の設置イメージ図

 眼鏡橋などの歴史建造物が並ぶ長崎県長崎市の中島川沿いに、インド独立の父とされるマハトマ・ガンジーの胸像(高さ2メートル超)が来月上旬、設置されることが分かり、地域住民らが困惑している。市に寄贈予定のインド側は当初、平和公園(松山町)内を希望したが、市は個人の像を設置した前例がないことなどから認めず、最終的にインド側の希望で中島川沿いに決まった。
 ただ複数の関係者によると、市幹部が市議会側への説明の際「インドは核保有国なので平和公園に設置できない」との見解を示しており、場所の検討や決定を巡る経緯に疑問が残る。
 市によると、昨年10月に鈴木史朗市長と面会した駐日インド大使が、胸像を寄贈する意向を表明。平和公園内には世界各国・都市から贈られた16基の平和モニュメントがあるが、市はガンジー像について「子どもや花などがモチーフの抽象的モニュメントを受け入れてきた平和公園のコンセプトにそぐわない」と断った。
 インド側は市が代替案として示した「稲佐山公園内」を受け入れず、観光地の「眼鏡橋周辺」を提案した。これを受けた市が中島川公園の周辺で検討。長崎原爆の当初の投下目標(常盤橋から賑橋付近)に近いことなどを理由に、「平和の象徴」として寄贈されるガンジー像を袋橋そばの一画(栄町)に設置すると決めた。
 だが中島川周辺は江戸時代に架けられた石橋などが残る歴史地区で、インドとのつながりは確認されていない。さらに長崎大水害の復興記念碑などはあるが、現時点で他に「平和」に特化した像はない。市が平和公園に設置しない理由を「核保有国だから」と議会側に説明したことも判明したが、平和公園内には核保有国の中国やソ連(現ロシア)から贈られた像があり、市の説明は矛盾している。
 市は中島川沿いの設置場所の整地工事を開始。その他の制作費や設置費などはインド側が負担し、3月上旬に完成するという。市は2月下旬から周辺自治会に経緯などを説明。近隣住民から「市民や観光客が戸惑うのではないか」「納得できないが既に反対しようがない」などと戸惑いや諦めの声が上がっている。

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