「心身に不調」4割 専門家「見通し示し不安解消を」 北國新聞社アンケート(下)

  ●地震発生2カ月 「気分沈みがち」「眠れない」

 北國新聞社が能登半島地震発生2カ月に合わせて行った避難者アンケートで、心身の不調の有無を聞いたところ、4割が「不調」または「やや不調」と回答した。「気分が沈みがち」「眠れない」と心の不調を訴える人が多く、先行きが見通せない中、不安を募らせている傾向がうかがえた。高いストレスは「災害関連死」のリスクを高める恐れがあり、専門家は「被災者を安心させるため、行政が生活再建の見通しを発信していくことも大切になる」と提言する。

 アンケートは2月20~29日に能登の1次避難所と、金沢、南加賀、富山の2次避難所で行い、10~90代の365人が答えた。

 今の体調について「良好」が220人、「やや不調」が124人、「不調」が21人となった。

 「やや不調」「不調」と答えた人に、どんな不調を感じるか聞いたところ、「気分が沈みがち」38人、「眠れない」34人でそれぞれ全体の10.4%、9.3%に上った。「血圧が上がった」など身体的訴えは比較的少なかった。2次避難所での回答が約6割を占めており、快適な環境が体調維持につながっている可能性がある。

 南加賀の2次避難所に身を寄せる輪島市の80代女性は「毎晩寝汗がひどくて目が覚める」と答え、同市の40代女性は「今後の方針が定まらず、考えても答えがでない状況が苦しい」と話した。「環境が変わり、血圧が少し高くなった」(80代女性)、「食欲がない」(80代男性)との声もあった。

 避難所を出た後の住まいの希望について聞いたところ、修理した自宅(168人)が46%に上った。次いで仮設住宅(122人)が33.4%、行政が家賃を負担する民間のみなし仮設住宅(46人)が12.6%となった。

  ●〈防ごう関連死〉金大・菊知充教授(精神行動科学)

 気分の落ち込みや不眠がいずれも全体の1割を占めている。普通、不眠は10人に1人もいない。被災したショック、避難生活の影響が出ているといえる。

 2次避難により、ホテルや旅館など快適な場所に移ったとしても、普段やっていた買い物や洗濯、掃除、孫守りといった日常が送れないストレスは大きなダメージになる。特に高齢者にとっては生きがいで、不眠や気分の落ち込みは、注意深く診ていく必要がある。 地震発生から2カ月が過ぎ、北陸新幹線県内全線開業など、多くの人の意識から震災が遠のいていく。能登の人々からすれば、取り残されたような気分になり、先が見えない不安を高めてしまう恐れがある。東日本大震災でも同じようなことが言われた。

 前と同じ生活には戻れないという現実も目の当たりになってくる。仮設住宅に入れたとして、仕事はどうなるのか不安も募る。被災者の不安解消には、行政が職業の確保や家の復旧といった経済的な生活再建への見通しをしっかり発信することが大切になる。

 うつやストレスが長引くと、脳卒中や心筋梗塞、感染症にかかりやすくなり、災害関連死のリスクが増す。避難所みんなで、お互いを気遣って声をかけたり、それぞれが新たな役割を持って動くことが大事になる。(談)

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