【ダンデライオン】の栽培方法と活用アイデア3選|桐原春子さんの育てて楽しむハーブ生活

「ハーブは暮らしに役立ててこそ、楽しい!」と話すのは、長年にわたってハーブを育て、その利用法を研究してきた桐原春子さん。本連載では、毎回1種類のハーブを取り上げ、栽培方法や活用方法、歴史などを教えていただきます。第30回は【ダンデライオン】(タンポポ)です。

本連載の他、桐原春子さんの記事はをご覧ください。

じつは食べるとおいしい【ダンデライオン】

ダンデライオンの和名はセイヨウタンポポ。身近すぎて過小評価されがちなハーブの筆頭ですが、薬効に優れ、食べてもおいしいのには驚かされます。ぜひその魅力を知ってください。

別名/セイヨウタンポポ(和名)
科名/キク科
性質/多年草
草丈/10~20㎝

サラダやおひたしで春の息吹を

「ダンデライオンはハーブの専門書に必ず登場する薬効の高い植物です。そのよさをもっと広めたいとずっと思っていました」と話す桐原春子さん。

もともとは中央アジアからヨーロッパにもち込まれたとされますが、繁殖力が旺盛で世界各地に帰化しました。日本にも在来種のタンポポがありますが、明治期に渡来したセイヨウタンポポがあっというまに広がり野生化しています。ハーブとしてはセイヨウタンポポ、在来種のどちらも利用できます。

「ダンデライオンは葉に強力な利尿作用が、根には健胃、強壮作用などがあり、薬用植物として盛んに利用されています。葉は食べてもおいしく、ニースの朝市ではサラダ用に山盛りになって売られていました。根を粉末にしたものはタンポポコーヒーと呼ばれ、花をワインに漬けたり、ブラッドベリの小説でも知られる “たんぽぽのお酒” にもなります」

葉には独特の苦みがありますが、株の内側の葉や春のやわらかい葉は苦みが少なく食べやすいのです。

「ゆでて水に放ち、しっかりしぼったものにかつお節をかけたら、父がおいしいと食べたことも思い出です」

花や綿毛はクラフトにも活用

ダンデライオンの花や葉、綿毛はポプリなどクラフトにも使いやすいそう。

「綿毛はふわふわの状態では飛んでしまうので、花が終わってつぼんでいるときに茎ごと採取して。それを吊るしておくと綿毛タンポポができます」

タネまきで増やしますが、ハーブや野草の専門店で苗を購入し、育てても。河原などから採集する場合、長い根を傷めないようシャベルで深く掘り取ります。綿毛ができるとあらゆるところにタネが飛んでいくので、隣家などに迷惑がかからないよう、栽培の際には注意を。

総苞片(そうほうへん)の向きで種類を見きわめて

1株のダンデライオンをポットに植え、小さなバスケットに入れました。株は四方に広がるロゼット型で、ぎざぎざの葉が印象的。黄色のかわいい花が咲くのも楽しみです。ちなみに花弁の下を覆う緑色の総苞片が下向きに反り返るのがセイヨウタンポポ(右下)で、直立するのが日本在来のタンポポ(左下)です。

ニホンタンポポ
セイヨウタンポポ

活用アイデア① ダンデライオンのサラダ

ダンデライオンの葉は、株の中心部のやわらかく苦みの少ない部分を使います。ベーコンなどを多めのオリーブ油で炒め、熱いうちに油ごと葉にざっと回しかけ、からめて食べてください。タンポポがこんなにおいしいなんて、とクセになること間違いありません。

作り方(2人分)

❶フライパンにオリーブ油大さじ2~3を中火で熱し、5㎜幅に切ったベーコン2枚を炒める。クルトン大さじ2~3を加えて軽く炒め、火を止める直前に小さく切ったパプリカ(赤)¼個、かぼすなどの柑橘の汁適量を加える。

❷皿にチマサンチュなどのレタス類3枚を敷き、ダンデライオンの葉12枚、クレソン適量を散らし、①を油ごとかける。

活用アイデア② 押し花のしおり

押し花はダンデライオンの花の愛らしさをとどめておくのにぴったり。紙に貼る際に、水で薄めた接着剤を押し花の上から塗るときれいに仕上がります。学名などの英文字を書き入れるとより素敵に。

しおりの隣に置いたのは、粗塩にパンジーなどの花びらを混ぜてラヴェンダーオイルを垂らしたモイストポプリ。上に綿毛をそっとのせています。

作り方

❶市販の押し花用シートや新聞紙の上にダンデライオンを置き、その上にティッシュペーパーを重ねる。上に厚い本などをのせて、重しがわりにする。

❷3~4日たったらダンデライオンの位置をずらして同様に本などをのせる。3~4日ごとにこれを繰り返し、約2週間、乾燥させる。

❸工作用の接着剤に水を少し加えて、やわらかくしておく。

❹好みの大きさに切った厚紙に、②をのせる。③を筆に取り、押し花の部分のみ塗る。紙の端のほうにパンチで穴をあけ、好みの太さ、長さのリボンを通して結ぶ。

活用アイデア③ タンポポコーヒー

根を薄くスライスして乾燥させ、コーヒーミルなどで粉末にし、フライパンでからいりすればタンポポコーヒーに。カフェインを含まないので寝る前も安心です。自分でも作れますが、ハーブ専門店などで入手できます。

小さじ1に150mlのお湯を注ぐのが基本で、苦みははちみつや牛乳を加えて調整を。

撮影/川部米応

※この記事は「ゆうゆう」2021年4月号(主婦の友社)の記事を、WEB掲載のために再編集したものです。


監修者
園芸研究家 桐原春子

英国ハーブソサエティー終身会員。長年、自宅でさまざまな植物を育て、家庭での実用的かつ美しい庭づくりを提唱。国内外の多くの庭を訪れ、ハーブの歴史、育て方、利用法を研究。カルチャースクールでハーブ教室の講師を務める。『知識ゼロからの食べる庭づくり』(幻冬舎)など著書多数。ブログ「桐原春子のハーブダイヤリー」やインスタグラムでも情報を発信中。

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