「横山大観展」画風の変遷追う企画展 6月2日まで福井県立美術館、重要文化財も展示

重要文化財の「瀟湘八景」(1912年)。風景に人の営みが描かれ、伝統的な画題に大観の独自性が光る

 近代日本画を築いた巨匠の軌跡を一望する福井県内初の「横山大観展」が、福井県福井市の県立美術館で開かれている。前後期合わせ重要文化財2点を含む代表的な61点を展示する。師である福井ゆかりの思想家、岡倉天心(1863~1913年)が「奇想天外より落ち、毎回人を驚かすものは横山大観の作なり」と評した革新の人に迫る。

 同館が主催。水戸藩士の家に生まれた大観(1868~1958年)は、東京府中学校(現在の都立日比谷高)卒業後、東京英語学校(現在の日本学園中・高)に進学。東京美術学校の開校を知って絵を志し、1889年に1期生として入学した。校長を務めた天心の薫陶を受け、西洋画に伍(ご)する新たな日本画を打ち立てていく。

 展示は5章立てで、1~4章は時系列で大観の画風の変遷を追う。

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 序盤の大作の一つ「屈原」(前期のみ展示)。天心や大観が美術学校を辞め日本美術院を設立した98年の作品で、国政を追われた楚の詩人・政治家が、吹き荒れる風に向かい厳しい表情を浮かべている。人物を抑制的に描く当時の画壇では異色の表現だった。

 「空気を描く方法はないか」。近代的な日本画を求め、天心が問うた課題だ。大観と盟友の菱田春草(1874~1911年)はインド(03年)、欧米(04~05年)に渡って見聞を広め、西洋画に接して明暗や陰影による空気遠近法を習得し、新たな表現を模索していく。

 帰国後の「流燈(りゅうとう)」(09年)は、女性3人を線描によらずクリアな色彩で描き出す。重文の「瀟湘八景(しょうしょうはっけい)」(12年)=9日まで展示=は風景の中に人々の営みを配し、独創的と夏目漱石が称賛した。佐々木美帆学芸員は「40代の大観は水墨も着彩も描き、両方を極めようとしている。絵の中に入っていくような視点で、実験的な精神と独創性が充実している」と指摘する。

 37年に第1回の文化勲章を授与された大観は戦時下、国を象徴する富士や海をモチーフに精神性の高い作品を生み出していった。

 展示作品はどれも大きく、大画面に生き生きと山水や人物が描かれる。佐々木さんは「大きな絵を描くには構成力と、体力気力が必要。エネルギッシュな大観の絵は、見る人に元気を与えてくれる」と話していた。

 前期展は5月12日まで、後期展は5月16日~6月2日。一般1400円、高校生900円、小中生600円。障害者と介護者1人は半額。

 問い合わせは県立美術館=電話0776(25)0452。

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