物語をより豊かにする音楽「サウンドトラック」は想像力の音楽である【榎政則の音楽のドアをノックしよう♪】

古代から中世にかけて、ヨーロッパでは物語を伝え歩く吟遊詩人がいました。吟遊詩人は古代ギリシャの叙事詩だったり、時にはそのときの流行りの詩を、歌いながら伝える「朗唱」を行っていました。 日本でも鎌倉時代には「平家物語」を伝えたことで有名な琵琶法師がいました。 世界中で、楽器を弾きながら物語を伝える文化が発展していたのです。

この記事では物語を伝える音楽について、考えていきたいと思います。

物語の伝え方の変遷

口伝 物語を伝えるもっとも原始的な方法は「口伝」です。声で物語を繋いでいきます。 伝えられた人は、自分の中で世界観を構築することになります。そして、それがまた他の人に伝えられていきます。

⇒ピアノの悩み:薬指と小指がうまく動かない!どう解消する?

記憶を頼りに繋がれていくため、物語は一言一句正確に伝えられるということはありません。しかし、口伝の何よりも優れているところは、語り手の感情や興奮がダイレクトに聞き手に伝わることです。そして、文字が読めなくても、会場に行かなくても、人と人が向き合いさえすれば物語は伝えることができます。口伝は原始的ながらとても魅力的な物語を伝える方法です。

文章 そして、物語を千年後にも正確に伝える方法もあります。それは文に残すことです。詩や小説や教えなど、文にしておけば、それが残る限り、未来永劫正確に物語が伝わります。 一方で文は、声にはあった抑揚や興奮がありません。それでも手書きであれば文字を書くときに力を込めることはできますが、活字になってしまえば平坦な文字になってしまいます。 そこで、文章のみで情景や、深く複雑な感情を伝える技術が発展しました。文字だけでは、絵を見せることも音を聞かせることもできません。だからこそ執筆家には想像させる技術が求められ、読み手には自身の中に世界観を構築することを求められます。 これは高度なことですが、これこそが文章の持つ魅力といえるでしょう。

© 株式会社福井新聞社