漁再開、待望の水揚げ 門前・鹿磯漁港、志賀・福浦港を間借り

水揚げされた魚を選別する乗組員=志賀町福浦港

 能登半島地震で操業できなくなっていた鹿磯(かいそ)漁港(輪島市門前町鹿磯)の定置網船が23日までに、漁の再開にこぎ着けた。自宅が被災するなどして乗組員は半減。水揚げ作業は漁港の海底が隆起したため約30キロ離れた志賀町福浦港の一角を間借りして行うが、漁師たちは「能登の魚を多くの人に届けて被災地に希望をもたらしたい」と復興へ歩みを進める。

 23日午前1時半、ホクモウ(金沢市)の定置網船「第八ホクモウ丸」が鹿磯漁港を出発し、乗組員は沖合3キロ地点に仕掛けた網を回収した。

 石川県漁協門前支所によると、鹿磯漁港は地震で海底が約4メートル隆起し、発生当時に停泊していた4隻のうち3隻が転覆し、金沢でメンテナンス中だったホクモウ丸のみが被害を免れた。地震後は無事だった漁港内のわずかなスペースに停泊することはできたが、操業は断念せざるを得なかった。

 13人いた乗組員の中には自宅に住めなくなった人もおり、現在は7人に減った。能登町の自宅が全壊した船頭の山口勇次さん(41)は今季の出漁は諦めていたが、県漁協福浦港支所の協力で、被害が比較的小さい福浦港に水揚げできることになった。

 23日は、アジやサバ、タイ、フクラギなど計4トンを水揚げした。選別機や製氷機が復旧しておらず、乗組員は手作業で魚を大きさや種類別に分けた。その後、箱に詰めてトラックに載せ、金沢や氷見の市場に運んだ。

 作業には通常の倍以上となる約4時間を要したが、それでも山口さんは「漁に出られるだけでありがたい。おいしい魚を皆さんに届けられるように丁寧な仕事を心掛けたい」と話した。

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