今季の一般開放断念 黒部宇奈月キャニオンルート再延期

橋桁が落石でへこんだ鐘釣橋=1月5日(黒部峡谷鉄道提供)

  ●トロッコ復旧見通せず損失10億円

 富山県は27日、10月1日ごろに延期していた新観光ルート「黒部宇奈月キャニオンルート」の一般開放について、今季の開始を断念すると発表した。能登半島地震の影響で、同ルートと宇奈月温泉を結ぶ黒部峡谷鉄道の鐘釣橋付近で落石で損傷した斜面の被害が大きく、同社運行のトロッコ電車が今年度に全線開通できなくなったためで、復旧時期は見通せていない。新田八朗知事は、経済損失が約10億円に上るとの試算を示した。

  ●鐘釣橋付、近岩盤にずれ

 復旧工事を担う関西電力によると、トロッコ電車の走行ルートである鐘釣橋付近にある岩峰を4月に現地調査したところ、長さ12メートル、重さ約250トンの岩盤が約50センチずれていたほか、新たな亀裂が3カ所見つかった。

 崩れる恐れのある岩盤を除去する工程と、新たに見つかった亀裂を接着する工程が加わった。岩盤の除去は来月に着手を見込むが、工事完了の時期は見通せないとしている。欅平駅周辺では擁壁が地震の影響で約10センチ沈下する被害も見つかり、27日からボーリング調査を始めた。

 関西電力黒部川水力センターの水田潤一所長は「グループが一体となって安全第一で1日も早い復旧を目指したい」と述べた。

 黒部峡谷鉄道が年間を通じてトロッコ電車の全線開通を取りやめるのは、1971(昭和46)年の設立以来初めてとなる。例年は雪の解けた4月中旬~11月末に運行されるが、今年度は温泉街のある宇奈月から猫又までの一部区間のみの営業となる。

 黒部峡谷鉄道の青島郁男総務部長は「関係者の皆さんの期待に応えられないのを大変申し訳なく、残念に思っている」と語った。

  ●長期化の懸念も

 黒部宇奈月キャニオンルートは、欅平駅(黒部市、標高600メートル)から黒部ダム(立山町、標高1470メートル)までの約18キロを機関車などで結ぶルート。県は当初、6月30日の一般開放を予定していたが、鐘釣橋の復旧工事のため10月1日ごろに延期されていた。2度目の延期となる今回は、具体的な開始時期が示されておらず、問題が長期化する懸念もある。

 県庁で報道陣の取材に応じた新田知事は「震災による影響に負けないよう、関係者と連携して準備に万全を期す」と話した。一方で、延期期間が長期化する可能性については「黒部峡谷鉄道があってこそのキャニオンルート。鉄道側が現時点で開通の時期を見通しておらず、県もそれ以上のことは言えない」と述べるにとどめた。

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