山形への思い伝わる9点 元芸工大学長・陶芸家の故会田さんの作品、山形美術館へ

「陶板 月よ走れ」

 東北芸術工科大の学長を務めた陶芸家会田雄亮さん(1931~2015年)の作品9点が、山形市の山形美術館に寄贈された。会田さんは色の異なる粘土を重ねる技法「練り込み」を得意とした。寄贈作品は技法の特徴が表れた花器、屋内外の空間も作品形成の要素とする「環境造形」につながる陶板や陶織などで、一部は館内に常設展示されている。

 寄贈作品は「陶板 月よ走れ」「陶織」「練込山霞紋花器」など。「月よ走れ」(1996年、縦100センチ、横100センチ)は、練り込みで青系のグラデーションを作った三日月が特徴的。「陶織」(91~94年、縦70センチ、横194センチ)はいくつかの形の白いパーツを大量に平面で組み合わせ、織物を連想させる。

 七回忌を終えたタイミングで妻暁美さん(81)=東京都=が申し出、昨年11月に美術館に寄せられた。

 会田さんは東京生まれ。両親が山形市出身で、疎開中は旧山形二中(現山形南高)に通った。千葉大で都市計画を学んだ後、陶芸の道に。練り込みで作る斬新な文様が高く評価された。環境造形も多く、同市の霞城セントラル広場にあるモニュメント「虹の防人(さきもり)」などが県内にある。米国の美術学校講師や陶器メーカーのチーフデザイナーを経て92年から芸工大教授となり、98~2002年に同大の第2代学長を務めた。文化人として幅広く活動し、1979年にコーヒーのテレビCMに「違いがわかる男」として登場した。

 山形美術館では2005年に大規模な個展を開き、約200点とともに40年(当時)の制作の歩みを紹介した。暁美さんは「山形への思いはひとしお強かった。(寄贈作品の)展示を通じ、会田の気持ちが伝わるのでは」と話す。

 岡部信幸副館長は、幅広い活動領域と理念、思想を十分に表す代表作が寄せられたとし「多くの人に見てもらいたい」としている。

「陶織」
元東北芸術工科大学長の会田雄亮さん

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