山形屋の私的整理決まる 苦境に立つ老舗百貨店、経営再建へ“難関“は越えたが…県民からは熱いエールと注文 求められる「街の顔」としての自覚と変革

私的整理による経営再建が決まった山形屋。営業は通常通り続ける=28日、鹿児島市金生町

 鹿児島県の老舗百貨店、山形屋(鹿児島市)の私的整理による経営再建が決まった28日、買い物客や周囲の事業者からは「なくなっては困る店なのでひと安心」「地域一丸で支援する」などと後押しする声が聞かれた。一方で、天文館の顔として「再建には幅広い視点を持って」といった要望も上がった。

 近くに住み毎日のように通うという黒岩姿子(しなこ)さん(58)は、経営再建スタートの一報に「昔から愛着があり、なくてはならない店」と胸をなで下ろした。靴店店員の永松貴子さん(46)は「インターネットで何でも買える時代だけど、山形屋の包装紙があると気持ちまで届けられる気がする。かけがえのない存在」と安堵(あんど)する。

 山形屋の魅力を改めて感じる人も多い。山形屋地下の天ぷら店で30年以上勤務する大川原マリ子さん(75)は「再建の報道以来、お客さまが増え、愛されているのを実感した。あと5年は働いて盛り上げていきたい」と誓う。近くの靴店で勤務する地頭所宏美さん(43)も「山形屋に行く途中で寄ったというお客さんもいる。近くにある影響は大きい」と話す。

 「山形屋は単にモノを売るのではなく、人が集う要の場。まずは良かった」と喜ぶのは、天文館商店街振興組合連合会の平岡正信代表理事(55)。大型郊外店の進出などで天文館の人出は減少した。天文館は山形屋と補完性を持つとして「経営再建には幅広い視点で取り組んでほしい。商店街としても全力で支援する」と力を込めた。

 一方で、厳しい意見も聞かれた。近くで飲食店を営む50代男性は「大手系列店なら、とっくにつぶれている。街の顔という自覚を持って」。近隣の事業者も「銀行ではなく客が山形屋に魅力を感じるかが再生には大事だ」と指摘した。

 本州出身の同市唐湊3丁目の大学生大坪航太さん(21)は「鹿児島で初めて買い物したのが山形屋。思い入れがある」。一方で同世代の利用頻度は少ないといい、「もう少し若者向けのテナントがあれば友人と買い物に来やすいのに」と今後の展望に期待した。

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