珠洲で創業120年の衣料品店閉店 「地震なければ…さみしくなるわ」

閉店を惜しむ来店客と言葉を交わす坂下さん(右)と久美子さん(左から2人目)=珠洲市上戸町北方

  ●店舗兼住宅が全壊、間借りでセール

 珠洲市飯田町で120年前に創業し、住民に親しまれてきた衣料品店「衣料ストアーサカシタ」が28日、営業最終日を迎えた。地震で店舗兼住宅が全壊し、同市上戸町北方の「ギフト今井」を間借りして閉店セールを実施してきた。3代目店主の坂下重雄さん(77)と妻の久美子さん(76)は、閉店を惜しむ来店客に感謝を伝え、店の歴史に幕を下ろした。

 衣料ストアーサカシタは、重雄さんの祖母きくさんが創業した。飯田町商店街の店は、重雄さんが23歳で父重吉さんから受け継いで繁盛させてきたが、地震で倒壊、重雄さんは17時間閉じ込められた。

 後継者もなく閉店を決めた坂下さんに、ギフト今井店主の今井実さん(50)が場所貸しでの閉店セールを提案し、坂下さんが崩れた店の中から在庫品数千点を取り出して13日から販売していた。

 28日には男性用肌着など十数点を残すのみとなったが、多くの人が来店。重雄さんや久美子さんに近況を伝える常連客もいた。重雄さんは「ここまでやってこれたのは満足だけど、地震がなければやめることはなかった。さみしくなるわ」とつぶやいた。

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