県観光被害700億円に キャニオンルート再延期響く

  ●自民会合で知事報告

 富山県の新田八朗知事は29日、東京で開かれた自民党能登半島地震対策本部の会合にオンライン出席し、地震による観光、宿泊関係の損失が年額700億円に拡大するとの試算を示した。新観光ルート「黒部宇奈月キャニオンルート」の一般開放が来春以降に再延期したことや、同ルートに向かう黒部峡谷鉄道のトロッコ電車で今季の全線開通が断念されたことなどが響いた。

 能登半島地震では、黒部峡谷鉄道トロッコ電車の鐘釣橋で落石被害が確認され、復旧工事のため全線開通が遅れている。県は3月時点で、旅館・ホテルのキャンセルを含めて年額600億円の損失が見込まれると推計していた。

 黒部峡谷鉄道は当初、10月1日を目標に全線開通させる予定でいたが、鐘釣橋付近の斜面の損傷が想定以上に大きく、工事が遅れる見通しとなった。そのため、トロッコ電車を経由するキャニオンルートも今季の一般開放を断念することとなった。復旧時期のめどは立っていない。

 新田知事は27日に、キャニオンルートの一般開放が今季できないことによる経済損失が約10億円に上るとの見通しを示していた。県によると、ルートを組み込んだ旅行商品が造成されていた場合を考慮すると、損失想定額はさらに増えるという。

 県が損失額を再度計算したところ、トロッコ電車の今季の全線開通が難しくなったことも加え、総額は3月時点から約100億円増えた。

 会合は冒頭を除いて非公開で、関係者によると、新田知事はこれまでの経緯を示した上で「秋の紅葉に間に合わせたかったが、雪が解けて現地に入り、検査の結果、今年度中の(黒部峡谷鉄道の)全線開通はできないことが判明した」と述べ、約700億円の甚大な損失が見込まれるとした。

  ●旅行需要喚起策を

 会合では被災地の復興に向けた政府への第2次提言案を取りまとめた。30日に岸田文雄首相に提出する。

 提言案には、液状化対策が課題となっている富山県への支援を特別交付税で対応することや北陸応援割より手厚い旅行需要喚起策を実施することなど7項目を盛り込んだ。能登半島地震の教訓を生かした取り組みとして、デジタル技術を活用した防災システムを構築することも明記した。

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