紙の処方箋やめます 松任中央病院、1日から 国の先行モデルに

電子処方箋について説明する松任石川中央病院の職員。全国に先駆けて全面移行する=白山市倉光3丁目

  ●原則電子化、全国で初 薬局対応率「日本一」

 「紙の処方箋はやめます」。病院で診察を受け、薬局で薬をもらう際に必要な処方箋。公立松任石川中央病院(白山市)で6月1日、その処方箋を全て電子版に切り替える全国初の取り組みがスタートする。薬の情報を医師と院外の調剤薬局が共有する仕組みをより浸透させ、患者への重複投薬の防止や一元的な健康管理に役立てる。同病院は29日時点で薬局の電子処方箋対応率が8割を超え、「同規模の医療圏で全国トップ」(厚生労働省)で、国の先行モデルとして運用する。

 松任石川中央病院は、石川県内の31基幹病院や調剤薬局などが参加して2013年に運用を始めたシステム「いしかわ診療情報共有ネットワーク」をリードし、患者情報の電子化をいち早く進めてきた。昨年8月、県内の病院で初めて電子処方箋の対応を始めた。

 国は23年度、電子処方箋の普及を目指す「面的拡大地域」に同病院のエリアを選定。病院は管内の薬局を集めた説明会を重ね、電子処方箋のメリットを紹介して導入する薬局を増やした。

 松任石川中央病院によると、石川県内全体では12日時点で、561薬局のうち51%の287薬局が電子処方箋に対応しており、導入率は全国トップ。このうち、同病院がある白山市に、周辺の能美、野々市、川北の3市町を加えた医療圏では、108薬局のうち83%に当たる89薬局が運用しており、県内平均を押し上げている。

 病院を経営する白山石川医療企業団の横山邦彦副企業長によると、6月以降、電子処方箋に切り替えてからも、未対応の薬局や紙の処方箋を希望する患者には紙を配布するなど柔軟に対応する。かかりつけ薬局のない患者には対応薬局を紹介して普及をさらに進める考えだ。

 横山副企業長は「同じ薬を大量に受けたり、飲み合わせの悪い薬を避けることができるなど電子処方箋の効果は大きい。100%を目指して取り組む」と話した。

 

  ●地元ドラッグストアのチェーンで拡大 電子処方箋の対応率、白山、野々市高く 

 薬局の電子処方箋の導入が進む石川県内でも、市町別の対応率(12日時点)は、白山市が87.5%で最も高く、野々市市が78.0%で続く。

 背景として、クスリのアオキ(白山市)やコメヤ薬局(同)などドラッグストアチェーン店の調剤薬局が運用していることがある。横山副企業長は「白山市を中心に、地元のドラッグストアや薬局がネットワークを生かして対応薬局を広げていった成果が出ている」と指摘する。

 能登半島地震では、道路状況が悪く、松任石川中央病院に通えなかった患者に対し、電話で状態を確認して電子処方箋で現地のチェーン薬局で薬を処方したこともあったという。

 

 ★電子処方箋 処方箋の情報を電子化することで、患者の同意があれば記憶やお薬手帳に頼らず直近の処方や調剤状況を迅速に調べることができる。複数の病気があり、異なる医療機関や薬局を利用する患者にとって、重複投薬などを防ぐメリットがある。患者もマイナポータルを通じて情報を確認できる。昨年1月に運用が始まり、医療費抑制が期待されることから、国は病院や歯科医院、薬局に導入を促している。

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