【後見制度見直し】県内の体制整備も重要(5月30日)

 認知症や知的障害などで判断能力が十分ではない人を支える成年後見制度は、高齢化社会の進展で重要性が増している。国は制度の見直しを進める一方、円滑な利用を後押しする中核機関を、今年度中に全市町村に設置するよう求めているが、4月時点で県内の約半数の29自治体が未整備のままだ。後見人を必要とする本人や家族が制度を利用しやすくするため、設置を急いでほしい。

 後見人は、預貯金の管理や福祉サービスの利用手続きなどを被後見人(利用者)に代わって担う。利用者や家族の申し立てを受け、家庭裁判所が弁護士、司法書士、親族らから選任する。家裁の選任前に中核機関は、利用者の実情を踏まえて適切だと考えられる後見人を、地域の弁護士らの専門職、医療・福祉関係者、市町村担当者らが検討するための場を設ける。ミスマッチを防ぐ狙いがある。利用者の相談を受けたり、制度を広報したりする役割も担う。

 県によると、担当職員の制度への理解不足や、業務多忙などで設置準備が進まない例が目立つという。県は市町村に社会福祉士らを派遣し、制度の内容や中核機関を設ける意味を説明するなど、設置を促している。今後はさらに取り組みを強める必要がある。

 会津地方の11市町村は、共同で一つのNPO法人に中核機関を委託している。運営の効率化につながり、自治体の財政負担が軽減される。山間部には少ない弁護士らを確保しやすくなる。2022(令和4)年度の設置以来、住民への広報を重ねた結果、初年度は月平均7人だった相談は翌年度には14人に倍増した。こうした事例は小規模自治体の参考になる。

 認知症の人だけでも全国で数百万人、県内で10万人程度いるとされる中、昨年末時点の制度の利用者は全国約24万9千人、県内約2600人だった。利用しにくいとの指摘もあり、小泉龍司法相は制度の見直しを今年2月に法制審議会に諮問した。

 法務省は(1)後見人の終了・交代が難しい(2)本人の自己決定が必要以上に制限される場合がある―などを課題に挙げている。国内外の動向を踏まえて検討するとしているが、利用者や自治体などの意見を幅広く聞いて改善につなげるべきだろう。(佐久間裕)

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