5人が名乗り、6人目も「準備中」…乱戦模様の西之表市長選、馬毛島基地整備が再び争点に

 2025年3月の任期満了に伴う鹿児島県西之表市長選は、現職と新人4人が立候補の意向を示し乱戦の気配が漂う。それぞれ整備が進む馬毛島の自衛隊基地への考えを真っ先に述べており、争点化は避けられない。日程は1月26日告示、2月2日投開票が軸になる。

 現職で3期目を目指す八板俊輔氏(70)が2月の市議会で表明し、口火を切った。ただ、基地の賛否には触れず「国の動きに対応しながら最善の道を歩む」と従来の主張を繰り返した。

 市議会でも賛否両派から「市民の混乱を招く」と批判されており、市議の杉為昭氏(57)、元市議の浜上幸十氏(74)、会社役員の池田恵衣子氏(69)の基地整備に賛成する3人が立候補の意向を固める引き金になったことは否めない。

 賛成派の別の新人も、南日本新聞の取材に「立候補表明の準備中」と明言。反対派の医師三宅公人氏(71)を含め、再選挙となった2017年に並ぶ最多6人の争いになる勢いだ。

■独自性

 賛成派3人の背景は微妙に異なる。杉氏と浜上氏は長く基地誘致に取り組み、「生粋の推進派」を自負する。今年2月に鹿児島市からUターンした池田氏は基地整備に伴う米軍再編交付金の必要性を挙げ、「基地を受け入れて市政の充実を図る」という「容認」だ。

 馬毛島以外では、杉氏は農業、畜産の経験から「一番苦しい分野の実情は誰よりも分かっている」と強調。浜上氏は種子島に人を呼び込む方策として「基地整備に伴い、新たな振興法の創設を国に求めたい」と語る。池田氏は「女性目線できめ細かく優しい市政」を掲げ、福祉・教育の充実を1番手に挙げる。

 基地反対の三宅氏は「基地の賛否を超え、騒音の不安がある」とし、馬毛島での米軍空母艦載機陸上離着陸訓練(FCLP)阻止を最低目標とする。現役医師でもあり、医療・福祉分野への積極投資の必要性を指摘。「高齢者や障害者に十分なサポートを」と話す。

■懸念

 賛成派陣営が危惧するのが「票割れ」だ。従来は支援を期待できた商工会や建設業も、複数の関係者によると自主投票の公算が大きい。早めの名乗りには、支持拡大につながる人材を取り込みたい思惑が透ける一方、八板氏の今後の発言次第で立候補予定者が集約される可能性もある。

 反対派の一部は現在約3440人とされる基地工事関係者の動向に不安を抱く。告示日の3カ月前までに住民票を西之表市に移せば有権者になり得るからだ。同日選が見込まれる市議選も見据え、反対派市民団体の1人は「人口減が続いているのに、異常な増え方にならないか」と注視する。

 馬毛島が大きな争点となった17、21年の3回(再選挙含む)の市長選は投票率が70~80%台だった。有権者数算出の基となる選挙人名簿登録者数は1万2196人(3月1日時点)。次期市長選の投票率を75%とすれば、有効投票数の4分の1の法定得票数は2300票弱となる。現状ではこの辺りが当選の最低ラインとみられている。

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