【5月31日付社説】登山シーズン/危険回避の行動を最優先に

 天候や体力、経験などを踏まえて自分に見合った山を選び、余裕のある行程と、万全な装備で自然を満喫してほしい。

 新緑まぶしい季節となり、安達太良山や磐梯山、尾瀬などで山開きが行われるなど、本格的な登山シーズンを迎えた。近年は健康志向の高まりもあり、世代を問わず体力づくりなどを目的に登山を楽しむ人が増えている。ただ山での事故、けがも増加傾向にある。

 県警によると、県内の山岳遭難件数は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で一時減少したものの、行動制限解除後は年70~80件のコロナ禍前の水準に戻りつつある。今年も4~5月の大型連休中に7件発生し、2人が負傷した。

 遭難者の多くが、疲労や発病で歩けなくなったり、転倒や道に迷ったりしている。経験や知識が足りず判断を誤る、体力に見合わない無理な計画を立てることなどが引き金になってしまう。

 慣れた山や低山などでも事故は起きる。経験や知識が豊富なベテランが、滑落などで命を落とすケースは少なくない。自然の中での行動は常に危険が伴うと十分に自覚することが大切だ。

 安全を最優先にした行動が危険回避につながる。山の天候は急変する。軽装での登山は極めて危険だ。突然の雨や強風などで体力を消耗し、低体温症などにならないよう、好天が予想されていても防寒着や雨具、食料は必ず携帯すべきだ。体調が思わしくないときは、迷わず下山してほしい。

 初めて訪れる場所は、中級者以上でも地図などで分岐点や危険な場所を確認しておくことが欠かせない。最近は衛星利用測位システム(GPS)が搭載されたスマートフォンなどの電子機器を使い、位置情報を確認しながら歩くことができる。上手に活用したい。

 山は野生動物の生息域であることも忘れてはならない。最近はクマに襲われるケースもあった。クマは本来、警戒心が強く、臆病だ。鈴を鳴らし、ラジオを響かせ人の存在を知らせるなど、遭遇しないための対策を徹底すべきだ。

 県警は入山10日前までの登山届の提出を呼びかけている。郵送やファクス、電子メールのほか、全国の山を対象にした専用アプリでも提出は可能だ。低山であっても必ず提出してほしい。

 頂上を目指すだけでなく、高山植物や野鳥を観賞したり、山麓で弁当を広げたりなど、山の楽しみ方はさまざまあるが、ごみのポイ捨て、山野草の採集などの行為が散見される。環境保護の意識を忘れてはならない。

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