【人口減少対策】国は将来像を示せ(5月31日)

 福島県など25道府県の知事で組織する「日本創生のための将来世代応援知事同盟」が人口戦略緊急アピールを採択した。7月にも国に対して東京一極集中の是正、人口減対策などの政策の見直しを求める。内堀雅雄知事をはじめ各知事の強い危機感を国は重く受け止めるべきだ。

 緊急アピールは、国の地方創生の取り組みが始まって10年が経過する中、「人口減少の危機は解決していない」と指摘した。政策を統括推進する司令塔の設置や国と地方、各界が連携して国民運動を巻き起こすような環境整備を訴えている。

 地方創生を巡っては、内閣府などが中心となって施策を打ち出してきているが、省庁の縦割りが解消できず、相乗効果が表れていないとの声が出ている。10年間の反省を踏まえて実効性のある政策の再構築を促すような国への提言としてほしい。

 知事同盟は人口減対策に向けた共同声明も発表した。「転職なき移住、関係人口の創出・拡大」「産業・雇用の抜本的構造改革」「子育てに関する根幹的な経済支援」…。いずれも、国が一定の政策を掲げているが、人口減対策や人口の東京一極集中の解消といった視点が十分でないため、効果が上がっていないのが現状ではないか。現場を抱える各知事は国の対応に物足りなさを感じている。

 各知事からは、地方への企業や人の分散を進めるため、「人口減少に立ち向かうトップランナーとして地方から一致団結して行動を起こす」とのメッセージが発せられた。内堀知事も就職する際の県外転出が顕著となっているのが特徴とし、福島で働く魅力や喜びを若い世代に伝え、Uターンの環境を整える事業を展開するとしている。

 政策は出尽くした感がある。機能させるには、何が足りないのか。緊急アピールでは「持続可能で夢を描くことができる未来を、今生きるわれわれが将来世代に用意しなければ、日本の未来はない」とも呼びかけている。国が50年後、100年後の理想の姿を示し切れていないのが、政策がかみ合わない要因のひとつと言える。知事同盟が要望する国の司令塔が設置されたなら、まずは国家全体の明確な将来像を提示してもらいたい。(安斎康史)

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