世界の若者の「平和」は? 長崎初のOYW分科会 25カ国150人参加、記者も議論【ルポ】

社会問題の解決を考えるワークショップの様子=長崎市尾上町、出島メッセ長崎

 若者の国際会議「ワン・ヤング・ワールド(OYW)」の分科会として、平和をテーマに議論を深める「ナガサキ・ピース・プレナー・フォーラム(NPPF)」が11、12両日、長崎市で初めて開かれた。世界の若者が平和をどう捉えているのか。記者も参加し、意見を交わした。

 OYWは、次世代リーダーの育成・交流を目的に、国際団体OYWが2010年から世界各地で開催。NPPFは、長崎の産官学で設立したOYW長崎協議会(調漸会長)が主催し、25カ国150人の若者が参加した。
 11日は、国連の軍縮担当上級代表の中満泉事務次長や核兵器禁止条約の制定に尽力したジャマイカのショーナケイ・リチャーズ駐日大使ら国内外で活躍する活動家や起業家が登壇。「技術の活用」や「対話」など多様な切り口で取り組みや考えを紹介した。12日はワークショップ(WS)があり、5~6人のチームで社会問題と解決策を考えた。
■ アイデア紹介
 記者は二つのWSに参加した。「市民の力」がテーマの回では、立命館アジア太平洋大2年のセラム・ザレファさん(22)のアイデアを基に、世界中で使える情報プラットホームアプリを考案。全体に向け発表する機会を得た。
 セラムさんはエチオピア出身。農村部に知識や教育が行き届かず、人材育成や社会問題の解決が不十分な現状から「情報格差をなくす情報集約、提供の場」を提案。チームでアイデアを出し合い、書籍や知識人の講話を見る機能や人とつながる機能を持たせた。
 他のテーマからは「アフリカの歴史や課題を学ぶゲーム」「物や労働力を物々交換する仕組み」など、社会問題の解決に向けたアイデアが紹介された。
■ 「長崎」 の意味
 参加者たちは長崎での開催をどう見たのだろうか。セラムさんは「原爆投下から復興した長崎で平和を考えるのは意味がある。出会った人たちと解決策を探る過程は難しかったが素晴らしかった」と指摘。「核政策を知りたい広島若者有権者の会」の田中美穂共同代表(29)は「核兵器廃絶などの長崎らしいテーマがあってもよかった」としつつ「平和と経済活動を絡めることに不安があったが、普段会えない人とアイデアを出し合う場ができたのは希望」と笑顔で語った。

会場には交流や議論を楽しむ若者の姿があった

■ 「何かできる」
 WSで出会ったイラン出身の女性は、政策や根強い固定観念で選択肢が奪われる女性の可能性を広げる教育を提案。事実上の内戦状態が続くミャンマー出身の女性は、中満事務次長との質疑応答で、自国に対する国連の行動を率直に尋ねた。長崎、日本で描けない多様な平和の形や世界の現状を知り、視野が広がるとともに、被爆地長崎が核兵器廃絶を通して平和を訴える大切さもよく分かった。
 通訳なしの英語での会話。十分に考えを深め、発言できず、悔しい思いもあった。だが、全員が相手を尊重し、真剣に話を聞き、議論する。「平和な世界を作る」という“難題”を一緒に考え、語り合う心地よさと熱気が確かにあった。そんな空気に当てられてか、記者も「私にも何かできる」という気持ちを強くして会場を後にした。

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